第20章 招かれざる客
「お前の部屋ほんと何にもねーな」
「余計なお世話!」
人の家に上がりこんでなんて言い草だ。
三ツ谷くんと呼んでいた頃はあんなに優しかったのに、最近は俺への扱い方が雑になっている気がする。
「お前どんな服持ってんの?」
「勝手に人のクローゼットを開けるなよ!」
「お、このブランド好きなんだ?センスいいじゃん、オレも好きだぜ。つうかサイズちっせ〜」
俺が、この俺が完全にペースを乱されている…。
俺は割と、流れの主導権を握られるのが好きではない。
だからこういう時は、こうするしかない。
「…ねぇ、服なんかより、俺と楽しいことしようよ」
クローゼットを漁る隆くんを、後ろからギュッと優しく抱きしめる。
少し背伸びをして、耳元で囁いた。
隆くんが俺に寄せる想いを、俺は知っている。
「……お前」
「なあに?」
「そういうの、千冬は簡単に流せても、オレは無理だぜ」
「……………………」
プライドがズタボロにされた気がした。
「あ、そ。じゃあいい。一生服見てなよ」
ベッドに座り、机の上に置いていたファッション雑誌をめくる。
内容なんて、怒りで頭に入らない。ただ、見てるだけだ。
少しすると、隆くんが隣に座ってきた。
「せっかくオレが遊びに来てるんだから、雑誌なんてみんなよ」
「……」
無視していると、雑誌を取り上げられた。
「ちょっと!なにするの、返して!」
「お前が無視するから仕方ねえよな」
取り上げた雑誌をテーブルに置き、俺の両手首を掴んだ。
それに抗議しようと口を開いた瞬間、隆くんが顔を近づけてきた。
キスされる、そう思ってぎゅと目をかたく瞑るが、思っていた感触がない。
恐る恐る目を開けると、ニヤニヤと笑う隆くんが目に映った。
「は!?さ、サイテー!クソ野郎!」
「ぶふっ、あははは!」
「あーもう!俺のこと舐めてるよね!ぶん殴らせろ!」
「やってみれば?」
そういって腕を振りほどきたいが、さすが東卍の隊長、力が強い。
散々周りから言われるが、俺は力が強くない。
一生懸命力を込めるも、ビクともしない。
「へえ、力が弱いって本当だったんだな」
「くそっ…!お前…!」
暴走族としてのプライドまで傷つけられて頭が狂いそうだ。
「なあ、、楽しいことって何すんの?」
「っ……」
「するんだろ?教えろよ」
「そ、れは……」
