第4章 三ツ谷
「あれが皇帝って…マジかよ」
「すげー美人、女かと思った」
「おい、お前らマイキーに聞かれたら殺されんぞ。その辺にしとけ」
「は、はい!すみません!!」
とすれ違うやつが、みんな同じ事を言う。
やんわり注意したが、正直オレも同じ気持ちだ。
あいつは根っからの良いやつだし、気性が荒い方でもない。
滅多なことがない限り、相手が強かろうが弱かろうが絶対に手を上げない、そればかりか、些細な喧嘩をすればいつも自分から折れる。
そういうやつだ。
『わあ、三ツ谷くんって、本当にかっこいいね。俺、好きになっちゃいそう』
いつだかみんなの前で言われた言葉が蘇る。
マイキーにゲンコツくらって、いたい!ってドラケンに泣きついて。
きっと、あれは冗談なんだろう。
なあ、、同じ事を、今度二人きりの場所で言ってくれないか、そしたらオレは…
淡い想いを寄せる相手に思考をめぐらせていたら、いつのまにか集会は終わっていた。
「「「総長!!お迎えに上がりました!!!」」」
怒号にも似た声が聞こえる。
そちらに視線を向ければ、白い学ランのような隊服に身を包んだ集団がいた。
の部下がいる。
あいつは、部下がいると、豹変する。
「おう、悪ィな。
あとお前ら、よその縄張りであんまデケー声出してんじゃねーぞ」
「「「はい!すみません!」」」
あいつが豹変すると、一気に場の空気が重くなる。
初めてブチ切れてるのを目の当たりにした時、
その場にいた全員が動けなくなるほどの重たい空気と緊張感、そして恐怖が走ったのを覚えている。
「、そんな格好じゃ体が冷える」
「ああ、悪いな九条」
側近の九条が、他のヤツらとはデザインが違う裾の長い学ランをの肩に掛ける。
長身、艶のある黒髪、モデルみたいな端正な顔。
加えてドラケン以上と言われている高い戦闘能力。
あいつにお似合いだ。
どこかの映画のワンシーンのような景色に、酷く嫉妬した。
「あ…」
ふと、と目が合った、気がした。
めー、る、す、る、ね
オレに、言ったのだろうか。
もし勘違いだったら恥ずかしい、だから、オレは反応をしなかった。
だけど、あいつは微笑んだ。
その夜、メールが来た。
『ね、いつ遊ぼっか?』
ああ、胸が苦しい