第17章 作戦
さんが退院したと聞き、千冬と共にさんの元へ向かった。
場所は初めて会った時のあの廃ビルだ。
「いらっしゃい」
「さん、退院おめでとうございます。これ、よかったら」
「わあ、わざわざありがとう!」
普段の優しいさんを見て、ほっとする。
最後に見たさんは、鬼神の如く俺を吹っ飛ばし、その後……
「武道くん、この間はごめん。怪我させちゃって」
「え!あ!いや、あれは仕方ないっスよ」
「仕方なくないよ、本当にごめんなさい」
「さんって大体いつも謝ってるよなー」
「…うるさい千冬」
そういって恥ずかしそうに睨みつけるさんと、それをからかうように笑う二人からは、普通の友達以上の親密さが感じられた。
「それで、東卍とデス・ロウの溝を埋めるための親睦会をやりたいと思って、お話に来ました」
「え!なにそれー!おもしろそう!俺も参加したーい!何やるの?ビンゴ大会ある??」
「「…………」」
恐ろしいほどの軽さであっさりOKを貰ってしまった。
「っ…さんっ、可愛すぎる…」
「……」
何しに来たんだよお前は。
「でさー、どこでやるの?」
「それがまだ、決まってなくて…」
「チンピラの宴会に場所貸してくれるとこ少ないでしょー?
よかったらこっちの旅館の宴会場貸すよ?」
「え!?そ、そんなことできるんすか…!?」
「うん、だって西エリアは全部俺のシマだし」
すごいことをサラッと言ってのけた気がする。
本当に15歳なのかこの人。
承諾をもらったどころか、場所まで無料で手配してもらうというご厚意を受けまくって、渋谷に戻りマイキー君たちに報告した。
「なんか、すげぇなさん、本当に15歳?」
「あはは!タケミっちがそれ言うのかよ!まあ、でも、オレも思うよ。だからたまに見せる子供っぽいところがまた…!」
さんの話題をさんバカに振るのは間違いだったかもしれない。
「ま、主催頑張れよ!」
「お、オレだけ!?」
「マイキー君が指名したのはお前だろ、タケミっち。まあ、準備とかは手伝ってるからさ!」
宴会の幹事なんて、現代ですらやった事ない。
これまでのミッションを思うと、今回の和やかなミッションに人知れず微笑んだ。