第10章 千冬
辺りはすっかり暗くなった。
途中まで送るよと言って、今二人肩を並べて夜道を歩いてる。
「ねえ、千冬」
「なんですか?」
さんが立ち止まって、俺を見上げた。
「あのさ、ずっと言いたかった。あの時、ありがとう。それから、本当にごめん」
そういって、深々と頭を下げる。
「!やめてください、さんに頭下げさせたなんて知れたらオレが殺されます」
「ふふ、なにそれ。千冬が俺の大切な人だと知りながら手を出すやつがいるなら、そいつは俺に殺されちゃうね」
本人は笑っているが、まったく冗談になってない。
「あの時、俺完全に正気失っててさ…うん、死のうと思ってた。千冬が止めてなかったら、今こうして二人で遊べてなかった」
「…さん……」
「だから、ありがとう。なのに俺、クソガキとか言ってぶっ飛ばしちゃった。痛くなかった?大丈夫だった?」
「そりゃ、痛かったですよ」
「!…千冬、ごめんなさい…」
人の心を散々弄んだ仕返しにと、少し意地悪な返事をした。
そしたら、切ない声を出して、俺の胸の服をきゅっと掴んで頭を擦り寄せてきた。
かわいすぎてたまらない。なんだこれ。仕返しになってねえじゃん。
本当に俺とタケミっちを同時に軽々と吹っ飛ばした人間なのか、この可愛い生きものが。
「じゃあ、キスしてくれたら許してあげますよ」
そういうと、びっくりした顔で見上げてきた。
やばい、ちょっと調子にのりすぎたか。
「…へえ、言うね、千冬」
すみません、と言おうとした言葉ごと飲み込むようにキスされた。
「っ…!」
最初は触れるだけ、少ししたら、口内にぬるっとした暖かい感触がした。
嘘だろ、この人いきなり…!
「んっ、…千冬…もっと…」
「…!知らないっすよ、どうなっても」
コンクリートの壁に小さな体を押し付ける。
さんの足の間に片足をさしこみ体を密着させると、甘くてエロい匂いがした。
「ふっ、…ぁ……千冬、いいね、獣みたい。好きだよそういうの、男らしくて」
どこまで煽るつもりだ。
「さん、家、行っちゃだめですか、オレ…!」
「したくなっちゃった?…エロガキ」
耳元でそう囁いて、俺の熱くなった中心をエロい手つきで撫でた。
ゾクッとしてたまらず身震いしてしまう。
その先を、期待してしまう。