第36章 目覚め
「体力が回復して、折れた骨が戻ればリハビリできるってよ!よかったな!」
「ゆき、むら…ゴホッ!」
「おいおい!無理して喋んなよ」
コクリと小さく頷き、ペンを走らせる。
三人で、紙の上の文字に目をやった。
『りんも今入院してる?』
つい、ハッと息を飲んだ。
わかっていた。
オレも、三ツ谷くんも、雪村さんも。
今この人が一番知りたいことなど、理解していた。
いつか言わなくてはならない時が来るのも。
「」
雪村さんが、の頭を胸に抱き寄せる。
「なに?いきなり…ゴホッ」
「喋らなくていい。ただ、このまま聞いてくれ」
「?うん」
「凛は」
もう、この世にいないんだ。
まるで音のない世界のように、シンと静まり返る病室。
無意識に、グッと拳を握りしめていた。
「ごめん、ごめんな、ッ…!!
俺、なにも気付かなかった…!!
凛は、ずっと椚馬の事怪しんでたんだ…!!なのに!!ごめんなぁ…!!
俺が、俺が!ずっとお前のそばにいるから!!!」
「……………う、そ…………」
「ッ……クソぉおッ!!!何で、何でアイツが!!なんでだよおおお!!!!」
「……………」
さんの目から光が消え、絶望の影が落ちる。
全ての感情が消えたその顔から、涙がこぼれ落ちた。
「…………うそつき………二人で逝こうって……言ったじゃん………」
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その後、さんの腕はほぼ完治。
足の骨の方が治るまで時間がかかるらしが、それでも"体"の方の損傷はかなり良くなった。
「さん…少しだけでも、食べませんか」
「…………………」
あの日以来、さんは話さなくなった。もう1ヶ月も経っている。
食事もあまり取らないため、元から細かった体は更にやせ細ってしまった。
ねえ。
どうしたら、また笑ってくれるんですか。
どうしたら、またその声が聞けますか。
その時、携帯がポケットの中で振動した。
三ツ谷くんからだ。
「すみません、電話してきます。すぐ戻るんで」