第31章 千咒
「……なんか、思ってたのと違かったな」
「さんの事か?」
「ああ。…不気味だ。明るく気さくだけど、腹の底はドス黒い。ジブンは、ああいうやつは嫌いだ」
夕暮れ色に染まる帰路を、千咒と並んで歩く。
「……昔は、本当にいい人だったんだ。きっと、今だって…」
「花垣。わかるよ、その気持ち。ジブンは昔から皇帝の事知ってたし、中学の頃は憧れてたんだ。
でも、確信した。アイツは廃工場60人殺しの犯人だ。ジブンがあの頃尊敬していた皇帝は、もういない。」
そう、寂しそうに呟く。
そうか、千咒が会いたがっていた本当の目的は。
「……そう、だな」
憧れの人に、ただ会いたかったんだね。