第31章 千咒
「無礼者が…」
「!?」
千咒の飛び蹴りを、岩淵さんがさんを庇うように片手で受け止める。
「威勢がいいのはいいけどさ」
さんが徐にソファから立ち上がり、千咒の前に立つ。
「俺、お前ら半グレの抗争とかどうでもいいんだよね。何が目的で来たか知らないけどさ」
「……アンタ、マイキーと仲が良かったんだろ?」
「まあね。最近はなんか派手にやってるらしいけど、俺も人のこと言えないし。君も知ってるんでしょ、俺がやった事」
「……あの噂は、本当なのか」
「さぁ、どうだろうね」
含みのある笑みを浮かべ、再びソファに腰掛ける。
「………あんたは、半グレだけどいい人だって聞いた。街の人を守って戦ってるって。
でも、宛が外れたみたいだな。
お前も、今のマイキーと変わらない」
「随分な言い草だなぁ。
仲間を戦わせて見世物にして、金を搾取するクソみてぇな趣味の君たちに言われるなんてちょー心外だよ」
どこから仕入れたのだろう。さんは梵の内情を知っている。
さっきまで笑顔だった雪村さん達も、冷やかな目でこちらを見ている。
「そんな事までして一生懸命作り上げた精鋭部隊は、束になっても俺一人倒せないだろうね」
「……なんだと?」
「そうだ!俺もその地下に行ってもいい?君の仲間全部やったらさ、俺にも金ちょーだいよ!」
「名案だな!その金でこのビル全部ゲーセンにしようぜ!」
「いいね」
「自分は反対です。ゲームセンターはうるさいですし維持費もかかります」
「ふざけんな!俺一人でやるんだから全部俺の金だっ!」
再びギャーギャーと年相応に騒ぎ出すさん達に、少しほっとする。
「ま、そういうことだから。俺らは君らの抗争には干渉しない。もちろん、手助けもできない。俺らが手を貸すのはかつての東卍だけだからね。
って事で君らも一緒に遊ぼ!」
「え」
「じゃじゃーん、ここに人生ゲームがあります。優勝者には、さっきシェリエで買ったショートケーキをプレゼント!」
「やる」
「千咒!?」
結局。人生ゲームで遊び、何故かオレが優勝者して、千咒に睨まれながらショートケーキを食べた。
千咒は、かつてのマイキー君の思想に痺れたと言っていた。さんなら、今のマイキー君が変わるきっかけになると思ったのだろう。