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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第22章 落花流水 前



線が細く儚げな美貌は端正であり、女性からいかにも好まれそうな容姿をしていた。長い前髪を左右に分け、後ろから前下がりに切り揃えられた髪型の彼は、先日の戦で計らずしも顔を合わせる事になった男────中川清秀にほんのりと面影が似ている。

「……貴兄、名は」
「申し遅れました。私は英斉(はなぶさいつき)、この英屋(はなぶさや)の若旦那でございます」
「…そうか」

(何となく亡霊さんに似てると思ったけど、ちょっとくらい似てる人なんて沢山居るだろうしなあ。現代でも有名人のそっくりさんとかよく出て来たりするしね)

すらりと優雅な所作で頭を下げる姿は、確かに商家の子息として申し分ない立ち居振る舞いをしているように見えた。若旦那という事は、光秀も知るこの英屋の大旦那────英左門(はなぶささもん)の令息にあたる。即ち、次代の跡継ぎだ。
左門は元々信長の信頼も厚い商人の一人であり、城の薬師に薬草を卸しているのも、この英屋である。彼の名乗りを耳にして淡々とした声で相槌を打った光秀は、そのまま視線を凪へ流した。

「ここは安土一の薬草問屋だ。好きに見るといい」
「薬草屋さん…!」

若旦那の件は多少気になりはしたが、似ている人も中には居るだろうと結論付けた凪は、店内の香りで何となく察していたが、光秀の言葉に確信を得ると破顔する。大きな目を見開き、心なしかきらきらとして嬉しそうな様を見せた彼女は、先程までの羞恥から来る不機嫌など何処かへ呆気なく吹っ飛んでしまったようで、店内を見回る為、そっと繋いでいた光秀の手を離した。
するりと己の手から離れて行った凪に内心でやれやれ、と苦笑を溢し、念の為若旦那の動向に目を光らせながら光秀は彼女の横顔へ視線を向ける。

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