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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第22章 落花流水 前



「…約束を守れないのなら仕方ない。悪い子にはお仕置きが必要だな」
「いつもみたいに戦とか、何か重要そうな事じゃないですよ…!」
「重要だろうがそうでなかろうが、約束は約束だ。この可愛い唇がすべてを語りたくなるような事をされたいなら、このまま黙っているといい」

さあ、どうする?と色めいた調子を滲ませて問われると共に、男の端正な面持ちがぐっと近付いた。触れるか触れないかの絶妙な距離を保ち、光秀の親指の腹が凪の唇をゆっくりとなぞる。金色の双眼を意地悪く眇め、口元に笑みを刻んだ何とも愉しげな表情を前にし、凪は光秀が本気である事を本能的に悟った。

(やばい、これ本気なやつ…!!)

完全に身の危険を感じた凪が色んな意味で戦慄し、男の唇から零れた吐息が凪の唇へかかった瞬間、苦肉の策で瞼を硬く閉ざし、声を発する。

「み、光秀さんに口付けされるの見ただけです…!!」

赤く上気した顔できっぱりと言い切られた光秀は、瞼を閉ざしたままである彼女の様子をしばし観察し、口元へほんのりと笑みを刻んだ。

「………ほう?そうか」

少しだけ開いた間が気にならない訳でもないが、それでも相槌が聞こえて来た事に凪は微かな安堵を溢し、そろりと窺うように瞼を持ち上げる。鼻先が触れ合いそうな至近距離に居た男の整った顔が視界へ映り込み、ぱちりと目が合った瞬間、未だすくい上げられていた顎をくい、と引かれた。

「んっ…!」

唇同士が重なり、軽く啄まれる。柔らかな互いの感触を少し味わった後、愛らしい水音を立ててすぐに離れて行けば、凪はじわりと目元を更に赤くし、唇を引き結ぶ。傍に居る光秀が何もかもを見透かしたかの如く笑い、凪の視線を金色の眸で絡め取った。

「嘘はいけないな」
「!!?」

鼓膜を打つ色を含んだ低音が、確信を持って囁かれる。思わず目を瞠ってしまった凪の眸が驚きで揺れる様を目の当たりにし、光秀が吐息混じりの笑いを溢した。すくい上げていた顎を指の腹でするりと撫ぜ、何故嘘だとバレたのか、といった顔をしている彼女を前に、愉しげな面持ちを浮かべて見せる。

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