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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 軍議と側仕え



「この話は仕舞いだ。貴様は末座へ下がれ、凪」

凪の処遇について、全ての話は済んだとばかりに信長が告げた。
てっきり自身に関する話が済めば、部屋を辞していいものだと思っていた凪は一瞬面食らうも、逆らうと面倒な事になりかねない為、一つ返事をして静かに信長の御前を退く。

「恐れながら信長様、部外者を軍議の場に居させる事は賛同致しかねます」

凪が動いた直後、それまで無言のままに圧を飛ばしていた男───豊臣秀吉がちらりと顰めた柳眉をそのままに彼女へと視線を飛ばし、信長へ向き直ったあとで訴えかける。

(それは私も賛成です…)

凪としても極力物騒な事には関わりたくない。
内心秀吉に同調しつつ、入口に近い末座の隅へ座り直した凪に視線を投げるでもなく、信長は秀吉の訴えを一蹴した。

「これから話す事は、昨夜起こった本能寺の一件についてだ。凪とて当事者の1人である事に変わりはない。何より…俺がこの場に居る事を許可したのだ。秀吉、貴様は俺の決定に異を唱えるのか」
「……いえ、出過ぎた物言いを致しました。確かに当事者ではありますね。そして現状では最も怪しい存在とも言える」

(…やっぱり豊臣秀吉には思いっ切り疑われてる、よね…)

「おいおい秀吉、こんな弱そうな女が信長様暗殺に関わってるって本気で考えてんのか?」

助けた側である筈の自分が思い切り疑われている事実をむざむざと突き付けられた凪が、つい緊張で肩を強ばらせる。
姿勢を正したまま瞼を伏せ、信長へ恭しく頭を垂れた後、凪へ再度厳しい眼差しを向けた忠臣の鑑のような男に対し、割って入ったのは本能寺からこの安土城まで凪を馬に乗せて来てくれた男────奥州伊達家当主、伊達政宗だった。

「そうだとしたら、この女はなかなかの演技上手って事になるが…実際はどうなんだ?」
「演技も何も、ある意味私も信長様と同じで被害者みたいなものですから…っ」
「あの大火の只中に巻き込まれてしまわれたのです。か弱い女性の身で、さぞ恐ろしかったことでしょう…」

端から本気で取り合ってなどいない政宗の言葉に凪が憮然と言い返せば、険のある空間にそぐわない柔らかで心痛に満ちた気遣わしげな声がほのかに場を緩ませる。

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