第17章 月に叢雲、花に風
「自分にやれる事を、精一杯頑張ります」
「…いい目だ。貴様は光秀と共に後方へ付け。家康には医療部隊と兵站部(へいたんぶ)の指揮を任せる。残った者は秀吉と共に安土城の守りに徹しろ。…貴様等、ぬかるなよ」
「御意のままに」
信長の号令一つで軍議が終了の運びとなる。
戦に向けてそれぞれが準備の為に忙しなく動き出す中、凪は静かに手を握った。清秀が裏で糸を引く小国との、事実上は小戦と規模されるそれが一筋縄ではいかないものとなる事を知るのは誰も────否、光秀だけであったかもしれない。
様々な思惑と懸念を乗せたまま、凪の初陣となる山間の戦いが今、静かに幕を開けたのだった。