第16章 掃き溜めに鶴
「ほう…?それは楽しみだな。では、お前が唸るぐらいの達筆になった暁には、俺に文の一通でも書いて貰おう」
「……何で光秀さんに宛てて文書かなきゃなんですか」
「楽しみにしているぞ。…果たしていつになるやら」
「………絶対達筆になってやる」
光秀が溢した言葉はいつも通りの戯れだ。
しかし、その時にふと感じた違和感へ、凪は普段通り言い返しながらも内心で首を捻る。口角を持ち上げ、挑発的な笑みを見せた光秀に対して眉根を寄せつつ決意を新たにした凪はしかし、自らの中に感じた仄かな違和感を完全に忘れ去る事は出来なかったのだった。