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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第15章 躓く石も縁の端



駄目押しとばかりに告げられたそれは、負けん気の強い凪にとって効果は絶大だった。むしろそれを分かっていて敢えて煽った光秀は、憤慨しながら言い切った彼女を前に、してやったりと笑みを深める。
人を化かした狐の如く、金色の眼をすっと眇めて軽く顔を近付け、自身を真っ向から見つめて来る凪の眸を覗き込んだ。

「ほう……?言質は取ったぞ。では近い内にでも時間を設け、お前の指南に励むとしよう」
「よ、よろしくお願いします…!」

ほとんど勢いだけで言ってしまった凪が、ふと我に返って近付く男の顔を見つめる。心の奥底を覗き込むかの如く目の離せない色合いを帯びた眸が愉しそうな様を覗かせていて、彼女は内心でまたやってしまった、といつもの如く頭を抱えた。
けれど、時既に遅し。光秀の、いわく生易しくない情勢指南を受ける事が確定してしまった凪はいっそ開き直ってふい、と顔を逸らした。

おそらく内心では、またいいように乗せられてしまったと後悔しているだろうなと思いつつ、かと言って他の男に譲るつもりなど毛頭ない光秀は先程撫で損ねた頭を宥めるように撫ぜる。
憮然とした顔で眉根を寄せている彼女を見つめ、男はつい意地の悪い笑みを隠せず口元を綻ばせた。

「将来有望な弟子が出来て俺も鼻が高いぞ、凪」

(……絶対馬鹿にしてる!!)

男の声に滲む喜色は言葉の通りではない、別の意味を含んでいるのだが、当然それに気付く事の出来ない凪は密かに奥底で燻る闘志を燃やし、いつ帰る事が出来るか分からない乱世での生き方を確立すべく、知識を吸収しようと心に硬く誓ったのだった。


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