第15章 ビビとの別れ
船を奪われたと知り一味は慌てふためく。電伝虫に向かって怒鳴り声を上げるルフィから受話器を奪い花子がMr.2に問い掛ける。
「それで?今何処にいるの?」
《あんらぁ〜、その声は剣姫ちゃんねぇ〜!電伝虫越しでも可愛いじゃなぁ〜い♡》
「…もう1度聞くわ、今、何処?」
ケラケラと笑うMr.2にピキリと花子の額に青筋が浮かび、まずいと思ったのか慌ててMr.2は口を開く。
《あちし達…友達じゃなぁい?がーはっはっはー!あちしはサンドラ河の上流にいるわよぉう!》
その言葉を最後に電伝虫の通信が切れた。呆気に取られている一味をよそに花子が荷物を抱えながら声を掛ける。
「まぁ…行くだけ行ってみましょう。」
「…それもそうだな。もし俺達をハメようってんなら、そん時ぁぶちのめすだけだ。」
ここに留まっていても仕方が無い。身支度を済ませ窓に近付く一味に今まで黙っていたビビが問い掛ける。
「ねぇ…皆、私…どうしたらいい?」
絞り出された言葉。俯くビビにナミが駆け寄り彼女の肩を掴んだ。
「よく聞いてビビ、12時間猶予をあげる。私達はサンドラ河で船を奪い返したら明日の昼12時丁度に東の港に1度だけ船を寄せる。あんたがもし私達と旅を続けたいのなら、その一瞬が船に乗るチャンス!その時は…歓迎するわ!海賊だけどね…!」
「君は一国の王女だから、これが俺達の精一杯の勧誘だ。」
「来いよビビ!絶対来い!今来い!!」
「やめろって!ルフィ!!」
「なんだよ、お前等!来てほしくないのか!?」
「そう言うんじゃねぇだろ!ビビが決める事なんだ!!」
今、ここで決断するには彼女が背負っているものは余りにも大きい。ルフィだけは最後まで食い下がっていたが、次々と窓から飛び降りる一味を寂しそうに見つめるビビに花子が声を掛けた。
「ねぇビビ、海って1つなの。」
「えっ?」
「こんなに広いのに繋がってるのよ。」
優しく頭を撫で朱雀の背に乗る花子の言葉にビビは大きく目を見開いた。
「何処にいたって…繋がってるの。」
柔らかい微笑みを浮かべ飛び立つ彼女をビビは見えなくなるまで見つめていた。