第3章 むらさきいろのやきもち【紫】
平日の昼下がり、仕事柄インドアな環境がどうしてもついてまわる俺のために、すとぷりの活動のお手伝いもしてくれているくろばから散歩に行こうとお誘いの連絡が来た。
今日の分の仕事の目処はついていたため、俺はくろばに指定された場所まで向かった。
「うわ、見晴らしヤバい…!」
「都心にもこんな所あるんだって感じだよね!私もよく来るんだよ」
とても大きい土手のある広場。
家族連れやカップル、みんなそれぞれの時間を過ごしていた。
「今日はまだお仕事あるの?」
「いや、とりあえず目処だけ。情けない話…ちょっと煮詰まっちゃってて…」
「情けなくなんかないよ!なーくん頑張り屋さんだもん。むしろ働き過ぎ!」
"なーくん働きすぎ"
これはメンバーにもちょこちょこ言われる言葉。
俺はただ、すとぷりをもっとたくさんの人に広めたくて。
メンバーが楽しく活動できるように、そんな俺達を応援してくれるリスナーのみんなや、俺達に関わってくれた人達をみんな幸せにしたくて。
ただそれだけの事を考えて行動しているだけ。
「あ、なーくん今また仕事の事考えてたでしょ!」
「へ?い、いやぁ…」
「ダメダメダメ!今日はまったり私と過ごす!私の事だけ考えてれば良いの!」
ちょ、ちょっと…
くろばの事だけ考えてって…
「ん?どうしたのなーくん?」
「い、いや別に…!」
くろばの口からとんでもない言葉が出てきて、思わず体が強ばってしまった。
「ほら、なーくんこっちこっち!レジャーシート持ってきたから一緒に座ろ?」
っていうか今ふと思ったけど、俺いまくろばと二人きりで、久々にくろばと顔を合わせたんだけど…
「ほらほら早く〜!」
なんか前会った時よりも、更にめちゃめちゃ可愛くなってない…!!!???
「はい、なーくんここ座って!」
くろばが俺の腕を掴みストンとその場に座らされる。
「なーくん、どしたの?もしかして、どっか具合悪い?」
そう言って腕を掴まれたまま、くろばが至近距離で俺の顔を覗き込んでくる。
うわ…
くろばの目、キラキラしてる…
「ねえ、なーくん大丈夫?もしかして日差し眩し過ぎた?」
いや、眩し過ぎるのはくろばの方だし…
くろば、顔ちっちゃ…
それに唇も小さくて…