第5章 ももいろのちかい【桃】
「ね、くろば」
「…んっ、ふっ、ぅぅっ…」
「俺と結婚しよ…?」
「…はぃっ…!」
泣きじゃくったままのくろばが、とびきりの笑顔でそう答えた。
そしてこの日から数ヶ月が経ち、お互いの仕事が一段落したタイミングで、今日は結婚指輪を一緒に買いに行く約束をしていた。
「あ」
「ん?どしたの?」
「くろばに渡したいものあるんだよね」
「え?」
買い物に出掛ける直前で、そう俺はくろばに伝えた。
そして自室に戻り、とある物を後ろに隠し持ちながら、くろばの居るリビングへと戻ってきた。
「何?今から結婚指輪買いに行くってのに、何渡されるの私」
「いやあ、タイミング超考えたんだけど、今日にしちゃおうかなって」
プロポーズはだいぶ前だったけど。
そう言って俺は後ろに隠してたピンク色のジュエリーボックスをくろばの目の前に差し出す。
「え、これ…」
くろばが驚いてくれるのは想定済み。
そのまま俺はジュエリーボックスの蓋を開き、その場で片方の足を立ててしゃがんだ。
「さと…み…っ」
「…俺と、結婚して下さい」
「…っ」
そう俺が言った瞬間にくろばの目の前に差し出した指輪は、俺のモチーフにもなっているピンク色をしたダイヤモンドの指輪。
あまりゴテゴテしたラブリーな物はくろばの趣味ではないと思い、デザインは幸運の象徴でもあるクローバーにした。
くろばに、ずっと幸せであってほしくて。
「…くろば、返事、くれる…?」
目の前で泣きじゃくり始めたくろばにそう問い掛けた。
「…っ、うっ、は、はいっ…!こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いしますッ…!!」
そう言って飛び付くようにくろばが俺に抱き着いてきた。
「おっ、とッ…!?」
「さとみッ…!!」
「ん?」
「大好きッ…!!」
くろばがとびきりの笑顔でそう言った。
「ハハッ、指輪買いに行ける?」
「む、無理かもっ…」
「じゃあさ、婚約初夜って事で家でゆっくりしない?」
「な、何よ。婚約初夜って」
「なに?みなまで言わせる?」
「…もうっ!」