第3章 むらさきいろのやきもち【紫】
「う、ウソだぁ…」
「本当だもん。なーくんのリスナーさん達にも分かるぐらい怒ってるもん」
そう言って、くろばが顔を曇らせる。
「…ごめんね?今日は付き合ってくれてありがと」
泣きそうな顔になったくろばが、そう言いながらお弁当箱や水筒を片付け始める。
「ちょ、くろば…?」
「お仕事頑張ってね?じゃ、じゃあまた…」
レジャーシートはどうするの?
って、今はそんな事考える場合じゃない。
「ちょっと待ってくろば」
「あ、レジャーシートは捨てちゃっても大丈夫。安いやつだし…」
そんな事言わないでよ。
「くろばがこれ置いてくなら、ちゃんと家に持って帰って保管しとくよ」
「そ、そんなのダメだよ。だってなーくんのお仕事の邪魔しちゃう…」
「こんなの全然。仕事に支障あるワケないでしょ?」
むしろくろばと一緒にピクニック出来た記念品としてずっと持っておくよ。
その会話を最後に、黙りこくってしまうくろばと俺。
「…ね、くろば。俺のここ座って?」
返事は返って来なかったが、再びくろばが俺の隣に腰を掛けた。
…良かった。
だが、相変わらずくろばから何か話してくる様子はない。
「…くろば?」
これは、俺も腹を括らなきゃいけないかもしれない。
でも、もしそれが悪い結果になってしまったら…?
すとぷりの今後の活動に支障をきたしてしまったらどうする…?
「ね、くろば。そのままで良いから、俺の話聞いてくれる?」
くろばが頷く事はなかったけれど、その場を離れる事もなかった。
「今日、くろばが俺をここに連れてきてくれた事、本当に嬉しかった」
そんなの関係ない。
くろばをこんなな顔をさせてしまったのは俺だ。
だから、俺がちゃんとケジメをつけなくちゃいけない。
「フルーツティーもサンドイッチも本当に美味しかったんだけど…」
「けど…?」
やっとくろばの声が聞けた。
「や、やっぱり好みじゃなかった…!?」
その俺の言葉を皮切りに、くろばがやっと顔をあげる。
「ち、違うから!本当に美味しかったし、また食べたいし、なんなら毎日でも食べたいし!」
「じゃ、じゃあ毎日作る…!」
「へ…?」
くろば、今なんて…?