第18章 鈍感
「危ない!」
何故か盗賊団のアジトの中に紛れていた少女が、興奮した盗賊の目に留まり、鈍く光る曲刀が振り下ろされる。私は何も考えずに盗賊と少女の間に割り込んんで切れ味の鈍い刃を背中に受けた。
「くぅ…。」
切れ味が悪い分、破壊される組織は多く、痛みも当然大きい。その痛みに耐え切って私は少女を巻き込まないように抱き締めながら迎撃する。
「エアメイク・アーテラリー!!」
圧縮された空気は大砲の如く唸りを上げて敵を吹き飛ばした。そこに階下から駆け上がってくる足音が複数。
「リア!!」
血相を変えて駆け寄ってきたのはグレイ。その後ろでナツとルーシィ、エルザが残党と応戦してくれている。もともと二階にはそんなに敵は居なかったし、後は任せて大丈夫だろう。
「お姉ちゃん…ごめんね。」
「謝っちゃだめよ。ありがとうって言ってくれた方が嬉しいな。」
「うん…ありがとう!」
「じゃあ、向こうの金髪のお姉ちゃんについて行ってね。お家まで送ってもらえるから。」
「分かった!」
そう言ってルーシィの所にしっかりとした足取りで向かっていく。
私とグレイを除く4人が階下へ降りて行ったことを確認して私は膝の力を抜いた。すかさずグレイが傷に障らないように支えてくれる。
「…冷たい。」
「我慢しろ。」
背中が凍っていく感覚がした。グレイの止血方法はいつもこれだから苦手だ。凍傷にならないようにしてくれてはいるが、それでもかなり冷たい。
背中の氷の浸食が緩やかになって処理が終わると、グレイは大きく息を吸って――
「馬鹿野郎!!何で魔法使わなかったんだよ!」
びくりと肩を震わせてしまうほどの剣幕に私は驚いた。怪我をしてしまったが、少女は救えたのだ。何をそんなに怒ることがあるのか。
「死ぬような怪我でもないじゃない。それに咄嗟のことで魔法を発動できなかったのよ。」
「違ぇよ!背中に傷が残るかもしれねェんだぞ。」
「それくらいのこと。」
「…お前は女だろ。」
「女だから何なの?」
「体を大事にしろよ。」
「性別は関係ないじゃない。」
「そういうことじゃなくてだな。」
「何?何なの?」
一向に的を得ない会話にだんだん苛立ちが募る。私は女だからと言われることが何より嫌いなのを知ってて発言しているのだろうか。