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フェアリーテイル 【短編集】

第7章 黒子


 切れ長の目を縁どる長い睫。そしてその目の左下にある黒点がリアは好きだった。ラクサスしか眼中にない彼との唯一の共通点だから。

「またフリードのこと見てるの、リア?」
「ミラさん。」
「いい加減話しかけてみたら?」
「そんな勇気ないですよ。それにフリードはラクサス一筋じゃないですか。」
「ラクサスは男の子じゃない。」
「いいんです。私はラクサスを好きで好きで仕方ない彼を見てるだけで十分。」
「そーお?お似合いだと思うけどなぁ。」
「それみんなに言ってますよね…。」

 私はまだ妖精の尻尾に入って2ヶ月。挨拶の際に言葉を交わしただけでそれ以来は話したこともない。


 実は以前、出身の村の近くに出没した魔物を討伐してもらった時に助けてもらったことがある。当時私はまだ魔法を使いこなせておらず、山から人里まで下りてきた魔物に襲われたのだ。攻撃を受けて立ち上がれず、死を覚悟した瞬間、間一髪のところでフリードに抱き上げられ何とか生き延びた。

「大丈夫か?」

 心配そうに私を覗き込んだその中性的な顔。そして私がゆっくりと頷くと少し待っていてくれ、と言って他の雷神衆と戦闘に戻っていった。

 その後村まで送り届けてもらい、そこで別れた。

 一見細身であるのに軽々と私を抱き上げて戦線から離脱した時の腕の力強さは今でも鮮明に覚えている。多分彼にとっては数多く遂行してきた依頼の1つに過ぎず、私のことも覚えてはいないだろう。それでも彼と魔導士という職業に惹かれ、妖精の尻尾に入った。

「リア、ギルドには馴染めたか?」

 突如私の思考を遮った声にハッとした。
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