第8章 大切で残酷な暖かい過去
部下
「ユリス補佐官はちゃんとお父さんですね」
ユリス
「まぁな。…悪いが、少し外しても良いか」
ユリスがエドゥアルと部下に声を掛けると、2人はしっかりと頷き
エドゥアル
「ん、行っといで」
部下
「はい、構いませんよ」
それを確認するとユリスは少女の身体を離し、代わりに手を繋いで部屋を出る。
休憩室にあるカフェでミルクティーとケーキを注文して、座っているレティシアの前に置いてやる。
少女の前にユリスが腰掛けると、不安気な視線が送られる
レティシア
「ユリス、怒ってる…?」
ユリス
「何でそう思うんだ」
レティシア
「私が言い返したから…」
ユリス
「怒ってねぇよ。娘が自分のために言い返してくれたのに、怒る必要が無いだろ。…ありがとな、レティシア」
そう優しく告げて頭を撫でてくれるユリスの温かさにレティシアは、嬉しそうに表情を緩めた
まだ幼い少女は仕事が出来て優秀だからと言っても、文句を言われれば当然傷付くし、親に会いたくなるものだ。
与えられた任務をこなし過ごしていた、何でもない日…ユリスとレティシアは最高司令官室に呼び出され、耳を疑う様な指示を受けていた
ユリス
「レティシアがヒガンバナ基地の指揮官?」
メディ
「そうだ。レティシアくん程の実力なら10歳で指揮官になっても問題は無いだろう」
今の指揮官が現役を退く事になり、後任を誰にするかと悩んだ時、レティシアが真っ先に思い浮かんだメディは早速その思いを告げる
ユリス
「実力は贔屓目なしで見ても他の守護官よりあるが…自分の娘でもおかしくない歳の奴に命令されて従う奴なんて少ないと思うけどな」
メディ
「簡単さ。…レティシアくんの実力で押し潰してやるのさ」
レティシア
「…誰かに指示するの、苦手」
ユリス
「押し潰すって…文句言えねぇくらい働いて、実力を今より示せって事か」
メディ
「そういう事。口で言ったって聞かないさ」
にこやかに告げるメディは、ユリスとレティシアをとても気に入っている。
その為、これは意地悪ではなくただの期待と予感。