第8章 大切で残酷な暖かい過去
数分歩いた所に小さなアパートが現れ、そこの一室へ2人は吸い込まれていき、ユリスとルシアンは扉の近くまで音を立てずに接近した。
部屋に入ったレティシアは、絨毯がひかれた床に座っていた
怪しい男
「お嬢ちゃん、何か飲み物飲むかい?」
レティシア
「いらない」
怪しい男
「そう」
そう答えると男はキッチンから離れレティシアの隣へ腰掛ける
怪しい男
「お嬢ちゃんは綺麗な顔をしているね」
聞こえてきた言葉にユリス達は、男が犯行に移ると判断しいつでも突入できる体勢をとる。
一方、レティシアは自身の髪を指に絡める男の気味の悪さに鳥肌をたたせて耐えていた
怪しい男
「…俺は君みたいに幼くて可愛い子が好きでね。中でも…苦しんでる顔が、1番好きなんだ」
レティシア
「……弱い人の命奪ってるのに、何で笑ってるの?」
怪しい男
「何だ…俺の事知ってるのかい?知っててついてきたって事は…そうなる事を望んでるのかな。良いね……望み通りにしてあげるね」
目と口を震え上がる程、歪ませる男を見てレティシアの表情は恐怖に染る。
そして次の瞬間─…
レティシア
「ぁ……っ…ぐ…」
怪しい男
「あぁ…良いね、その苦しそうな表情」
床に押し付ける形で男の大きな手は細い首を締めていた。
その苦しさにレティシアは表情を歪め、手を掴むも適うはず無く…少女の表情に男は恍惚とした表情を浮かべていた
─バンッ
怪しい男
「くっ…何だ!」
ユリス
「…そこまでだ変態野郎」
レティシアの苦しさに喘ぐ声が聞こえた瞬間に、予めユリスの魔法で開けていた扉を開き、ユリスがレティシアに跨る男を魔法で縛り上げたのだ
床に寝転がりながら噎せるレティシアにユリスが駆け寄ると優しく抱き起こし少女を包み込む
ユリス
「良く頑張ったな」
レティシア
「は、ぁ…っ……これで、他の子が…死ななくて良くなるね」
苦しさに涙を滲ませつつも笑みを浮かべる少女の言葉にユリスはしっかりと頷いてやり、何度も背中を撫でる
ユリス
「ルシアン。そいつを連れて行け」
ルシアン
「分かった」
怪しい男
「くそっ…もう少し見たかったのに…!」
立ち上がらされた男は悔しそうに吐き出し、ぎりっと奥歯を噛み締める