第8章 大切で残酷な暖かい過去
その数時間後、作戦は決行された。
作戦はとても簡単で、レティシアが怪しい者が現れそうな所を歩いたりするのみと殆ど持久戦だ。
レティシアが歩く近くに張るのがユリスとルシアンで、他の守護官は各々の場所に配置し…後は犯人が現れるのを待つだけとなった
被害にあっているのはレティシアと同じ9歳の少女。
レティシアは言われた通り、指示された場所をゆっくり歩くが未だ現れない
すると、少し遠い場所で見ていた守護官から無線を通して報告が入る
守護官
『暫くレティシアを見ていた30代くらいの男が今そちらに向かって歩き出しました』
その無線に全員の緊張感が更に増す。
近くに居たユリスとルシアンは互いに目を合わせ頷く
バレたらレティシアの命を奪われるのが早まってしまう危険性を考え、少女の耳にインカムはついていない。
声は聞こえないと意味が無い為、小型の盗聴器は少女につけてあった
ユリス
「…あいつか」
とうとうユリス達の視線に捉える事が出来た男を見てユリスが呟く。
怪しい男
「お嬢ちゃん、こんにちは」
急に話し掛けられたレティシアは僅か固まったものの、小さく息を吐き出しすぐに唇を弧に緩め
レティシア
「こんにちは」
怪しげな男はレティシアがフォンテーヌ家の人間とは知らない様で、綺麗に笑むその美しさに目を奪われ僅かに頬を染めている
怪しい男
「お嬢ちゃん、ここで何してたんだい?」
レティシア
「家出してきたの。…でも、どこも行く場所がなくて…」
これは事前にユリスに言えと伝えられていた言葉だった。
勿論それを知らない男はチャンスとばかりに少女を誘う
怪しい男
「じゃあ、家に来るかい?」
レティシア
「…良いの?」
怪しい男
「勿論。…さ、おいで」
レティシアは差し出された手を見て内心、繋ぎたくないと思ったが仕方無くその手に幼い手を重ねた。
ユリス達とは異なる温もりは優しさを感じる事がなく、レティシアの身体に鳥肌となって表れる。