第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリスはヒガンバナ基地のホワイトボードの前に立って周りに居る者へ視線を向ける。
ユリス
「良いか。今回は命がかかった囮捜査だ。どの捜査でも当たり前だが…各々、自分に振られた仕事を一生懸命こなせ」
全員
「はい!」
初めて間近で見るユリスの姿にレティシアとルシアンは尊敬の眼差しを向ける。
ユリス
「そして最後に1番重要な位置に俺とルシアンがつく」
守護官
「ほ、補佐官もこの捜査に参加されるのですか?」
ユリス
「嗚呼。別に補佐官が現場に向かうのは珍しい事では無いだろう。…私情ではあるが、自分の娘の命がかかってんだ。俺とルシアン以外に任せるには荷が重いだろ」
万一にも自分が補佐官の娘の命を落とさせてしまったら…それが補佐官の娘意外であったとしても、その危険性がある位置は誰でも嫌だろう。
全員、口にはしないがそう思っていた
ルシアン
「レティシア、大丈夫か?」
レティシア
「うん。ユリスとルシアンが近くに居るなら、大丈夫」
初めて任務で大役を任せられたレティシアは、他人から見たら動じていない様に見えるがユリスとルシアンが見れば、明らかに緊張している。
しかし、ルシアンが声を掛けると大丈夫と答える少女は強さを感じた
ユリスが指示を終えるとレティシアとルシアンの元にやって来た
ユリス
「レティシア。何度も伝えてきたが、人に向けて攻撃魔法は駄目だからな」
レティシア
「悪い人でも?」
ユリス
「そうだ。相手が魔法保持者なら話は別だが…そうそう魔法使いなんていない。犯罪者でも俺達と同じ人であるのを忘れるな」
レティシア
「分かった。…人に向けて攻撃魔法はしない」
ユリス
「良い子だ。無理だけはするなよ」
レティシア
「ん、大丈夫」
少女に話し掛ける姿を見てルシアンは改めてユリスが変わったと実感させられた。
1番変わったのは表情だろう。柔らかくなった。
次に何事にも面倒臭がり…いや、それは正直変わってはないがレティシアが来てからは、少しばかり改善された様に見えた。
その後、レティシアはジルヴァに待っているように告げてから心を落ち着かせる様に優しくジルヴァを抱き締めた。
普段は任務にジルヴァを連れて行くものの、今回は1人の方が良いとメディに言われ待っていてもらう事になったのだ