第8章 大切で残酷な暖かい過去
大きな音を立てて開く扉にユリスが驚いて顔を向ける。
ユリス
「おいおい…流石に驚くぞ。…って、どうした。何かあったのか」
文句を述べたユリスだったが、訪れたレティシアの表情が普段とは違うのを感じ取ると優しく問い掛ける。
その安心する姿にレティシアは思い切り抱きついて泣き出す
レティシア
「母様、っが…許婚に、会えって…っ…シュヴァリエ、家…だからって…」
ユリス
「こういう時ばっかり、お前を使うんだな。……よし、取り敢えず会ってこい」
レティシア
「…え…?」
思いもよら無かった言葉にレティシアは濡らした顔を上げて、ユリスを見詰める。
すると、彼の大きな手が少女の頭を優しく撫でる
ユリス
「行って、その次期当主とやらに文句でも言ってやれ」
レティシア
「文句…」
ユリス
「思ってる事ぶちまけて嫌われちまえ」
悪戯っ子の様に笑むユリスに、レティシアは気付いたら笑って頷いていた
レティシア
「終わったら…すぐに来て良い?」
ユリス
「何の確認だよ。ここはお前の家だろ。待っててやるよ」
レティシア
「ありがとう。…ジルの事、預けて良い?」
ユリス
「おう」
軽くなる心にレティシアは少しだけ落ち着けた。
そして、その日はあっという間にやってきて…
フォンテーヌの両親とは違って本当の優しさがこもった笑みを向けてくれるシュヴァリエ家、次期当主の両親。
両家の親の会話が弾んでいる時、息子のフェリックスはレティシアを誘った
それに仕方なく応えたレティシアは、シュヴァリエ家の庭に出ていた。
フェリックスは、レティシアよりも2つ上で少女と同じ金の髪を持っており、その髪を風に揺らされながらレティシアへ視線を向ける
フェリックス
「君に会うのは4年ぶりかな」
レティシア
「……さぁ」
フェリックス
「覚えてない…か」
レティシア
「私…」
フェリックス
「?」
着せられた装飾品が豪華なドレスの裾を軽く握ってレティシアは、フェリックスを見る