第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリス
「ゼフィランサスに?」
ルシアン
「嗚呼」
数日後、ユリスの家にルシアンが訪れていた。
ユリス
「なんだよ、突然」
目の前に座るルシアンの言葉を未だ咀嚼出来ないでいるユリスは、その発言に至った理由を乞う様に見詰める
ルシアン
「俺…もっと力つけたいんだ。精神的にも強くなりたい。で、ちゃんと俺もレティシアを守ってやりたい」
彼の強い瞳と言葉にユリスは、やっと先程の"ゼフィランサスに入りたい"というものを咀嚼できて、ふっと笑みを零す
ユリス
「この前ちゃんと守っただろ」
ルシアン
「…でも、俺はどうしたら良いか分からなくて…慌てたんだ。内心慌ててた、追い払った後…何したら良いか分からなくて、ユリスの元へ連れて行く事しか思い付かなかった」
ユリス
「あんな場面に初めて居合わせて、その歳で追い払えりゃ上出来じゃねぇか?」
ルシアン
「けど…」
ユリス
「分かってるよ。納得出来ねぇんだろ。……分かった。中等部には上がらずにシンメに入学しろ。俺が司令のメディに推薦してやる」
ユリスの言葉にルシアンの目が、徐々に大きくなる。
ルシアン
「ほ、本当…?」
ユリス
「本当だ。ただし、親御さんを説得すんのはお前だからな」
ルシアン
「分かった」
そして、その言葉通り12歳のルシアンは中等部へ上がる年にシンメにユリスの推薦で入学した。
ゼフィランサスが非魔法使いでも受け入れている為、勿論シンメも非魔法使いを受け入れ、少しでも誰かを守りたいと願う人材を育成している。
エドゥアル
「へぇ、ランクAか。優秀じゃないか」
ルシアンの入学テスト評価が書かれた資料を見ながら、エドゥアルが呟く。
ユリス
「魔力持ってなくてAは、中々いねぇぞ」
ルシアン
「そうなの?」
ユリス
「嗚呼」
3人で広げられる会話についていけないレティシアはジルヴァを抱きながら、疎外感を覚えていた。
その寂しさに耐えられなくなったレティシアは、ユリスの手を控えめに握る