第8章 大切で残酷な暖かい過去
男1
「そう、です…」
ユリス
「で?…そのまま連れて行こうと思ってたのが…なーんで、あんなにぼろぼろになってたんだ?」
一段と声を低くして1人ずつを見るユリスに、3人はまた黙る
ユリス
「何でだって聞いてんだよ。…おい、答えろや」
爪先でこんっと軽く脛を蹴られて催促された男が1度、息を吸い込んでから口を開く
男2
「こい、つが…魔法で飛ばされて」
ユリス
「で…ムカついたから殴ろうってか」
男2
「ち、違います…傷があった方が…貰える金が増えるんじゃ、って」
ユリス
「はぁ?この状況で良くそんな嘘吐けたな。…それはてめぇ等が殴る為の口実で、本当はムカついたから殴りました。じゃねぇのかよ」
男2
「それは…」
ユリス
「あんなちっこい奴に何ムカついて、手出してんだよ。しかも、無抵抗の相手だぞ…恥ずかしくねぇのか。あ゙?」
男3
「そ、の…」
ユリス
「てめぇ等がした事…俺がしてやるよ」
首とポケットから出した手をボキボキと鳴らして怯える3人を見る。
左に居た男の前に立ち右拳を振り下ろし頬を思い切り殴る。
すると、パイプ椅子ごと音を立てて男は倒れた
ユリス
「は?気絶しやがった」
有り得ねぇ、と吐き出してから今度は真ん中の男の前に立ち肩を掴んで腹部に1発、拳を入れる。
男は目を見開き大きく噎せる
男1
「はっ…すみま、せ…っ」
ユリス
「謝って許されねぇんだよ…」
男1
「ぐ、っ…ぁ…!」
肩から手を離して思い切り腹部に蹴りを入れる。
そして、最後に残った男はユリスが目の前に来ると、カタカタと身体を震わせる
だが、そんな事ユリスが気にする訳もなく。
思い切り拳を振り上げると、男はぎゅっと目を瞑るが…一向に痛みは来ず、ゆっくりと瞼を持ち上げる
エドゥアル
「…ユリス、そこまでにしておこう」
部屋に入ってきたエドゥアルがユリスの手首を掴んでいた
ユリス
「止めんなよ、エドゥアル。…自分の欲の為だけに何もしてねぇガキをあんなになるまで殴ったんだぞ。許せるわけねぇだろ…どいつもこいつも、あいつの事なんだと思ってんだよ…!」
初めて見るユリスの悲痛な怒りに、エドゥアルは眉を下げる。
彼にとって…いや、彼等にとってレティシアは気が付けば大きな存在になっていたと再認識させられた