第8章 大切で残酷な暖かい過去
エドゥアルはそのまま3人をゼフィランサスへ連れて行き、ユリスはルシアンを送って行った。
その夜。
レティシアとユリスは普段2人でベッドを使っている為、まだ目を覚ましていないレティシアに腕枕をしてユリスは寝顔を見詰める。
ジルヴァも心配そうにベッドの上で伏せながら、そわそわしている
ユリス
「…あの時、俺がちゃんと送ってやってりゃこんな事になんなかったのにな…ごめんな」
寝息をたてる少女の頬を優しく撫でながらユリスは小さく謝る。
─翌日…
薄暗いコンクリートの部屋に昨日、レティシアに暴力を振るった男3人が椅子に縛り付けて並ばされていた。
男達はこれから何が始まるのか分からず、目が泳いでいた
─キィ
ユリス
「よぉ…昨日ぶりだな」
コンクリートの部屋に入ってきたのはユリスだった。
その姿に男達は、ごくりと唾を飲み込む
ユリスの顔は笑んでいるのに、雰囲気と目は殺気に溢れている
モッズコートに両手を突っ込んだユリスが3人の前に立ち見下ろす
ユリス
「てめぇ等が昨日何してたか、教えてもらおうか」
男1、2、3
「……っ…」
ユリス
「聞こえなかったか?…それとも、ちゃんと指名されなきゃ答えらんねぇのか?」
ゆったりとした口調で言葉を発するユリスのそれに誰も答えない。
と言うよりは、答えられない
ユリス
「はぁ…じゃお前。答えろ」
男1
「……っ…あいつが、フォンテーヌ家の娘だって…見た事があって」
ユリス
「で?」
男1
「たまたま、歩いてたら…似てる奴がいて…近付いたら」
ユリス
「ビンゴだったっつーわけか」
男1
「は、い…。それで、誘拐したら…フォンテーヌから金…貰えると思って、そしたら…あいつが、自分は嫌われてるから…金は貰えねぇとか、訳わかんねぇ事…抜かして」
ユリス
「そのまま連れて行こうとしたんだな」
目を逸らす事なく睨まれながら訳を聞かれている男からは汗が止まらない