第8章 大切で残酷な暖かい過去
それを見た男達は驚いて、飛ばされた1人を見たものの頭に血が上ったのか、明らかに苛立ちを顔に貼り付けた
男3
「くそ、調子乗りやがって。おい、少しくらい傷がある方が…金の量が増すかもしんね」
レティシアは震える脚を何とか動かし逃げようと走り出すも、それでは逃げられる訳もなく簡単に腕を掴まれてしまう
レティシア
「いや…っ…!」
男2
「うるせぇな」
レティシア
「あ゙…!」
母とは違う力の強さにレティシアは目を丸くし、痛みに顔を歪める。
男1
「さっきは…良くも飛ばしてくれたなぁ、お嬢ちゃん」
レティシア
「ぅ…、っ…!」
男3
「おい、殺すなよ?」
男1
「分かってんよ」
"お嬢ちゃん"ユリスにも言われたものだったが、全然違うものだった。
それを思い出したレティシアは、大きな目から涙を零すが…それで暴力が止むわけもなく
あっという間に暫く痣がなかった少女の片目も頬も腫れ、口からは血が溢れ地面を赤く染める
だが、それを見付けた人物がおり…その人は慌ててその場へ走る
ルシアン
「レティシア!」
ユリスの家に向かう途中のルシアンだった。
男達は少女に振っていた手を止め、ルシアンの方へ視線を向ける
男達の間から見えたレティシアは、胸倉を掴まれて浮いており身体はぐったりとしていた。
ルシアンは内側から怒りが湧いてきて身体が熱くなるのを感じる。やっと日常から暴力が無くなり笑える様になっていた少女を血濡れにしている男達が許せなかった
ルシアン
「あんた等…そんなちっせぇ子に何してんだよ」
男1
「おー、正義の味方気取りか?」
男3
「ははっ、そりゃ格好良い」
男2
「こいつがさー、この子に魔法で飛ばされたんだよね。…それと、フォンテーヌの子じゃん?傷あった方がお金たっくさん貰えると思ってさ」
ルシアン
「飛ばされたわりには、ぴんぴんしてんじゃん。…やり過ぎだろ、クズ共」
鋭い視線を向けて吐き出された言葉に男達が反応し、レティシアをその場に置き拳を鳴らしながらルシアンの方へゆっくり向かう