第28章 大型魔獣と突然変異
ルシアン
「今までは現れても1体だけだったのにな」
ノア
「すね。…まじでその人が暴走させてんすかね」
ルシアン
「分からん、…が、今のあいつならやりそうだ」
ノア
「…そうなんすね。……ところで、どこにも居なくないすか?」
ルシアン
「嗚呼。不思議なくらい静かだな」
森に入り周囲を警戒しながら歩くルシアンとノアだったが、あまりの変化の無さに違和感を覚える。大型魔獣が居る時の咆哮や木々が倒される音も…ピリついた空気さえ伝わってこない
ルシアン
「おかしいな…」
ルシアンが呟くのと同時にレティシアからの無線が入る
レティシア
『いたか?』
ルシアン
「いない。…そっちは」
レティシア
『こっちにもいねぇ。…が、怪しい奴を見付けた』
ノア
「怪しい奴?」
レティシア
『嗚呼。場所を送る、すぐに来てくれ』
会話が途切れ位置情報が送られてくるとルシアンとノアは顔を見合せて頷き、そこへ急ぐ。
到着すると大きな木の後ろに隠れて様子を伺う様な2人の姿があった
ノア
「姫さん、リアムくん」
レティシア
「来たか」
ルシアン
「何を見ているんだ?」
リアム
「あれっす。あそこに立ってる人」
リアムが指さす方へ視線を向けると黒いコートを纏い、フードを深く被った隙間から顔は見えない
ノア
「あの人は?」
リアム
「あの人が戦わずして大型魔獣を森へ返したんす」
ノア
「え…返したって、暴走状態の?」
レティシア
「それが…暴走状態も解けていた」
リアム
「んで、レティシアが言うにはあの人が魔獣と関わってる何かじゃねぇかって」
ルシアン
「どの道、接触してみない事には分からんという事だな」
レティシア
「嗚呼」
話が纏まると4人は小さく頷いてからゆっくりと木の影から出て、その人物に近付く。
だが、その小さな音に反応してその人物が振り向く。
振り向いて分かったのは顔を覆っているのはフードだけではなく、真っ黒な面のような物だという事