第27章 彼女の地雷
ジルヴァ
「グゥ…」
レティシア
「ジル…」
ジルヴァが首を前に倒して自ら鼻先をレティシアの掌に当てる。それを見た3人は安堵の息を零すが、所長は悔しそうに顔を顰める。
レティシアが鎖で擦れたジルヴァの傷を治してやると…無理矢理かけられた元に戻る何かが効力を失ったのか、ジルヴァの身体が小さくなる。レティシアは優しく抱き上げて…既に寝息をたててしまっているジルヴァを撫でる
レティシア
「おかえり…ジル」
優しく安心したような笑みを見せていたレティシアだったが、未だ地面に倒れている所長へ鋭い視線を向ける。
拘束されたままの所長をルシアンとノアが無理矢理立たせる。
レティシアはゆっくりと近付くと温度の無い視線を所長へ向けた
レティシア
「本当に懲りないなぁ、あんた等は」
所長
「ふんっ、お前だって魔獣を物のように使ってるだろう」
「それは違いますよ、所長」
レティシアが言葉を返そうとした瞬間に聞こえてきたのはウェディーの声だった。ヒールの音を響かせながら近付いてくるウェディーの目には強い光が宿っていた。…何かを決意した、光だった。
所長
「…何だ」
ウェディー
「彼は自分の意思で彼女と居るんですよ。貴方がたとは違う」
所長
「偉そうに。お前も魔獣を実験体としか見てないだろ」
ウェディー
「一緒にしないでください。私は魔獣が好きです。彼等がお金にしか見えてない人とは違う」
電話をしてきた時は立場と言っていた彼女の言葉は、その立場を捨ててでも魔獣とこの現状をどうにか助けようとする彼女の決意。
そんな事が分からない所長はウェディーを馬鹿にしたように笑い
所長
「どの立場で言ってるんだ。お前なんて簡単に飛ばせるからな」
レティシア
「…私は言葉一つで何とかなってしまう自分の立場を利用して、人の人生を左右できる選択を簡単にする奴等が嫌いだ。あんたみたいなな。…だが、家族を攫ってこんな酷い目に遭わせたんだ。指揮官の立場を利用してあんた達をここに居られないようにしてやる」
所長
「ふん、出来るものならやってみろ」
どこまでも自信満々な所長の態度にレティシアは不敵な笑みを浮かべる
レティシア
「期待に応えてやるから、楽しみにしてろ」
そう述べると研究所を後にする