第26章 呪縛と秘密
クラリス
「数年前…母様は突然倒れてしまったの。お医者様にも診てもらったのだけど、病名が分からないみたいで。治療法も分からない中で…色んな方法を試して頂いたけど、どれも良くならなかったわ。そうしている内に母様はベッドから起き上がる事が出来なくなってしまったの」
クラリスの話を聞いてもレティシアは驚いたりもしなかった。
母親だとしても、彼女の中では母親だった人…今までされてきた事を思えば特に感情が動く事はなかった。
腕を組んだままレティシアは口を開く
レティシア
「魔法使いには頼まなかったのか」
クラリス
「頼んだわ…でも、誰も治せなかった」
レティシア
「………」
クラリス
「そんな時に…この前のパーティーが開かれたの。そこに姉様が居て…運命かと思ったわ」
レティシア
「それはつまり…私がこの人の病を治せるんじゃないかって、そういう事か?」
クラリス
「……っ…」
クラリスに当たったって仕方が無いし彼女は関係無い、そうは分かっているのにあんな仕打ちを受けたのに都合が良すぎる…クラリスが前もって言ってくれた事だが、そう思わずにはいられなかった。
鋭く刺すような瞳を向けられたクラリスは、思わず息を呑む
アリシア
「…随分…会わない間に乱暴な言葉を使うようになったのね」
訪れた沈黙を破ったのは先程まで眠っていた母だった。
その言葉にレティシアの鋭い瞳は横たわる彼女へ向けられた。
母の言葉一つ一つに昔のレティシアだったら怯えていただろう。だが、今の彼女には支えてくれる仲間がいる…隣にはリアムが居る事実が彼女を強くした。
それと同時に湧き上がる怒りと憎しみに口を開く
レティシア
「魔法が発動したからって育児放棄した奴が、私をちゃんと育ててくれた人の教育に文句言うんじゃねぇよ」
アリシア
「まぁ…っ」
母親の中では幼いままで止まっているレティシアの記憶。
そんな彼女が放つ言葉に目を丸くし、信じられないとでもいうように声を漏らす