第26章 呪縛と秘密
ドレイクと話していると急に入口付近がざわつき始めて、レティシア達は不思議に思ったものの…その渦の中の人物を見て息を吐き出す。
シュヴァリエ家の当主でありあの見た目だ、注目されて当然だろう。
他の参加者に囲まれても背の高い彼は目立ち次々と女性から声を掛けられる。だが、会話をしつつも切れ長の気怠げな目の中で揺れるスカイブルーの瞳は何かを探しているようで
ルシアン
「もしかして、レティシアを探してるんじゃないか?」
リアム
「キョロキョロしてますね」
レティシア
「それはごめんだ」
レティシアは慌てて背の高いルシアンとリアムの背中へと身を隠す。
フェリックス
「………!」
フェリックスのスカイブルーの瞳がルシアンとリアムを捉えた。すると、早々に会話を切り上げ彼等の方へ歩み始めた
ルシアン
「どうやらバレたみたいだぞ」
リアム
「そりゃ俺達と来てんだから、俺達に隠れたってバレるだろ」
的確過ぎる言葉にレティシアは言葉を返せない。
フェリックス
「レティシア」
レティシア
「はぁ…何だ」
観念して2人の後ろからレティシアが姿を見せると、その美しさにフェリックスの目が、ふっと柔らかくなり…それを見ていた女性は目を奪われた。
フェリックスはレティシアへ手を差し出す
フェリックス
「私と1曲、踊って頂けませんか」
先程バレてしまった事実が良くなかった。
フォンテーヌ…しかも、屋敷に篭もりきりだと思われていた長女とシュヴァリエ当主の2人が踊る姿など今後、見られるかも分からない。その思いに応えるように音楽が響く
逃げられない空気にレティシアはフェリックスに小声で話し掛ける
レティシア
「もうステップなんて覚えてない」
フェリックス
「大丈夫だ。俺がリードする」
レティシア
「だから、踊らないって…っ」
フェリックス
「もう、音楽はかかってるぞ?」
レティシア
「……くそ…っ」
フェリックスから顔を離すとレティシアは笑みを貼り付け
レティシア
「喜んで」
フェリックスの大きな手に自身の手を重ねた。
音楽に合わせて優雅にステップを踏む2人の姿は…まるで御伽噺に出てくる王子様とお姫様の様で、全員がうっとりする。