第26章 呪縛と秘密
クラリス
「でも、ねぇ…帰ってきてくれない?」
レティシア
「え?」
クラリス
「私1人じゃフォンテーヌは重過ぎるの。でも、姉様が一緒なら私…っ」
縋る様にレティシアの両手を握ったクラリスが姉を見詰める。
伸し掛る重圧…自分が当主としてやっていけるのか不安と戦う自分と同じ色の瞳をレティシアは見詰め返す。
でも、確かに見える芯の強さのようなもの。
レティシアは、ふっと笑みを浮かべ握られている手を解き、クラリスの両肩を優しく掴む
レティシア
「何を言ってるの。私はずっと家に帰ってないのよ。フォンテーヌ家の事…何にも分からない私が居ても意味がないわ。でも、クラリスはずーっとフォンテーヌ家の次期当主として育ったんだもの。貴女にしか務まらないわ。…大丈夫よ」
クラリス
「…姉様…」
優しくも強い言葉はクラリスの背を押してくれる様で。
姉は色んな困難を乗り越えてきたんだ…と分かる瞳にクラリスは表情を引き締める
レティシア
「それに、守護官の仕事が忙しいの。頑張りなさい」
綺麗に微笑む姉を見て…もっともっと沢山の思い出も彼女と作りたかったと、もっと一緒に居たかったと強く思い…涙が溢れそうになる。
その想いはクラリスだけでなく…レティシアも同じだ。
自分のせいで…何度そう思ったかは分からない。だが、クラリスに涙を流して欲しくなくてレティシアは脚元にいたジルヴァを抱き上げる
レティシア
「ジル…私の大事な妹。可愛いでしょ」
ジルヴァ
「んにゃ!」
レティシアに抱かれながら同意する様に声を上げるジルヴァを見て、クラリスは一瞬きょとんとするも…すぐにその愛らしさに笑みを浮かべる。
同時に"大事な妹"と言われた事が嬉しくなる
その後、ルシアンとリアムの事も紹介して…ホールへと戻った。そして、ドレイクの姿を見付けると3人は彼に近付く
レティシア
「ドレイクさん。…先程はありがとうございました」
ルシアン
「とても助かりました」
ドレイク
「いやいや、構わんさ。あの日、助けてもらったんだからな」
朗らかに笑うドレイクにレティシア達も気が付けばつられて笑っていた