第26章 呪縛と秘密
─バンッ
ルシアン
「おら、レティシア!さっさと起きろ!」
大きな音を立てて開く扉にも、びくともせずレティシアは暴れるジルヴァを抱き締めたまま瞼を閉じている。ルシアンは、ずかずかと彼女の部屋に入り布団を引き剥がす
ルシアン
「ったく、お前とユリスはいつもそうだ。気が進まない事があると絶対に起きない。変な所ばかり似るな!」
毎回、気が進まない任務や用事があるとユリスとレティシアは絶対に起きない。それをルシアンが起こさなくてはならないのは、今でも変わらない
レティシア
「嫌だ…行きたくねぇ…!」
ルシアン
「仕方ないだろ。ほら、さっさとしろ!」
レティシア
「動けなくなった…」
布団を剥がして腰に両手をあてながらルシアンは大きな溜息を零す。そして、軽々とレティシアの上半身を起こしてやるとジルヴァはその隙に逃げる
レティシア
「分かったよ……お、ルシアン…その格好、似合ってるな」
漸く起きたレティシアを見てルシアンはジルヴァを連れて特別室へと向かおうとしたが、レティシアの言葉に振り向く。
今日は例のパーティーの日だ。その為ルシアンは正装をしている。普段、黒や紺が多いルシアンは同じ様に黒を選ぼうとしたのをレティシアが止めた。
ジャケットとズボンは深い緑で、ダークブラウンのベストには金の糸でペイズリー柄が刺繍されており、シャツは派手すぎない黄色を合わせている。今はレティシアを起こす為にジャケットは羽織っておらずベストのみだ。
スタイルの良さを表す格好にレティシアは、だらしなく笑む
ルシアン
「そりゃ、どうも。…さっさと準備してこいよ」
僅か照れたように言葉を吐き出したルシアンは、今度こそジルヴァを連れて特別室へと向かった。
それを見送ったレティシアは、のそのそとベッドから降りて準備を始める。のんびりと準備を終えると特別室に向かう