第23章 食い違いの悲劇
義父
「人の家に土足で上がり込むなと…教えられなかったのか?」
レティシア
「はっ…あんたこそ法に反するなって教わらなかったのか?」
圧のある姿にも怯まず笑みを浮かべながら言い返すレティシアを見て、オリヴィアは僅かに驚く。自分は今でも脚がすくみそうなのに…と。
義父
「それに今までお前達、守護官は気が付かなかっただろう」
レティシア
「生憎あんたらみたいに悪事働く奴が多くてな。あんたらに良い思いばっかさせちまった」
義父
「………」
レティシア
「あんたらがやってる小型魔獣の違法販売、薬物売買、無許可風俗、人身売買、殺人…今回これに関しては、ついでだ」
義父
「は…?」
流石に理解が出来ないのか義父は怪訝そうな顔をする。
だが、視線をレティシアの手と繋がっているオリヴィアへと向ける
義父
「それを…どうする気だ?」
オリヴィア
「……っ…」
不意に向いた義父の目に捕らえられた様に動けず、オリヴィアは息がしづらくなる。だが、すかさずレティシアがオリヴィアを隠す様にして彼女の前に立つ
レティシア
「それ、だと?…あんたが引き取った娘だろ」
義父
「はっ…最初から娘として引き取っていない。治癒魔法が使えて性処理をしてくれる奴なら誰でも良かった」
ルシアン
「………」
男の発言にルシアンは眉間にシワを刻みつつ拳を握る。
義父
「可哀想な子供に衣食住を整えてやったんだ。俺は咎められる事などしていないぞ」
レティシア
「可哀想かどうか…てめぇが決めるんじゃねぇよ」
義父
「あ…?」
レティシア
「新しい家族が出来るんだと期待した人の気持ちをてめぇは踏み躙ったんだ。…終いには物みてぇに扱いやがって。違法に塗れたてめぇの何が偉いんだよ、なに人を見下してんだよ。…てめぇにそんな権利ねぇんだよ、このくそ野郎」
義父
「……っ…」
レティシアの覆う空気がピリッと肌を刺すようなものに変わる。紫の瞳で射抜かれた男は金縛りにでもかかったように身体が動かせず…呼吸の仕方を忘れる。
そんな経験をした事がない男の額からは冷や汗が滲み、呼吸が荒くなる