第23章 食い違いの悲劇
2歳くらい年下だろうか…それでも、包み込む様な優しい笑顔と暖かい救いあげる様な言葉が…彼女を年相応には見せていない。
オリヴィアはまた流れた涙を、ぐいっと拭ってレティシアの肩に掌を向ける
オリヴィア
「フラウフィ」
レティシア
「ありがとう」
オリヴィア
「…お礼を言うのは…私の方、よ…」
レティシア
「それは、ここから出れたら聞いてやるよ」
オリヴィア
「で、でも…」
レティシア
「何だ。まだ何かあるのか?」
立ち上がろうとしたレティシアだったがオリヴィアの言葉に顔を覗き込む。すると、オリヴィアは立ったままのルシアンをちらちらと見ていた
オリヴィア
「彼…私の事、怒ってる…みたい…だけど、良いのかしら…一緒に行って」
レティシア
「はぁ…ルシアン、その怖い顔やめろ。私の傷は治ったろ。彼女は被害者だぞ」
ルシアン
「……分かってる」
レティシア
「ったく…悪いな。ルシアンは過保護なんだ。でも大丈夫…強くて優しい私の自慢の兄貴だ。安心してくれ」
兄妹にしては似ていないな…なんてオリヴィアは考えてしまうが、彼等にもきっと何かあるんだろうと…ただ一つ頷く。
レティシア
「ほら、行くぞ」
柔らかい笑みを浮かべて再びオリヴィアに差し出されたレティシアの手を今度は躊躇いなく掴み、立ち上がる。
握り返してくれるその感覚が、まるで「離さないから大丈夫」と言われているようで、オリヴィアは頼もしい人だなと歩き出すレティシアを見ながら思う
オリヴィア
「あ、あの…こっちは玄関じゃ…」
レティシア
「ラスボス…捕まえに行くんだ」
オリヴィア
「え?」
その言葉に不思議そうにしたが、答えはすぐに分かった。
オリヴィアの義父でこの組の長。それが分かるとレティシアと繋いでいる手が震える
レティシア
「大丈夫だ。あんたは私が絶対に守ってやる。安心しな」
根拠は無いのに安心出来てしまうこの言葉は…この時も、8年経った今も不思議な程に心を落ち着かせてくれる。
ルシアン
「開けるぞ」
レティシア
「嗚呼」
─バンッ
ルシアンが扉を開けると、まるで来るのを待っていたように義父であり長の男は座っていた