第23章 食い違いの悲劇
だが、それでは駄目だと…施設に居た時にオリヴィア達から教えてもらった方法を使って男に謝る事にした。
1人椅子に腰掛けて酒を煽る背後からリオンは声を掛ける
リオン
「あ、あの……昼間は…ごめ─」
義父
「この…やろ!」
不意に訪れた衝撃。
それは男がリオンの声に反応して振り向いた瞬間に腹部へ蹴りを入れたものだった。
男は酒が入ると人が変わる性格をしていたのだ。
反抗しては酒を飲んだ男に手を上げられる、そんな日々がリオンの日常へとなったのだ
【メル】
メルを引き取ったのは1人の女で優しかった。
だが、それも暮らし始めて3ヶ月までであった。
ろくに彼女へ学ばせる事もなく、会話をする事もなく…
メルがお腹空いたと零せば調理をしなくて良い果物を与えるだけ。
そして、いつしかメルと女だけだった部屋に男が暮らし始めた。男は女に暴力を振るう様な奴だった。
義母
「…っ…ごめん、なさい…!」
男
「うるせぇ!」
義母
「う、っ…!」
メルの日常では男の汚い言葉と女の許してと泣く言葉ばかりが飛び交っていた。
そんなある日、男の目がメルへと止まった。メルは自分も殴られるのではと身体を小さく震わせ身構えた。近付いてきた男はしゃがむと手を伸ばし…彼女の金の頭へと乗せた。
その出来事が不思議で男を見詰めると…にっと笑う
男
「俺とこんな家出て行こう。な?」
そうしてメルに有無を言わせず手を取り、男は縋る女を無視してその家を出た。
メルが連れてこられた場所には沢山の女が露出多めの服を纏い働いていた。だが、彼女に与えられた仕事はただ物を運ぶだけ。
…だったが
男
「そろそろメルにも、あっちやってもらうからな」
その言葉に彼女は絶望した。
もう高校生になる年…1つの部屋に入れられて…考えただけで吐き気が催す。逆らう術を知らないメルは大人しく従い初めての仕事を行う為に部屋へと訪れた
メル
「…宜しく」
客
「あぁ?何だその口の利き方は。宜しくお願いします、だろ」
メル
「宜しく、お願い…します」
彼女の言葉は全てあの男から学んだものだ。教えてもらってない為にそんな言葉使いしか出来ない。