第23章 食い違いの悲劇
ぱちんっと乾いた音が響き─…
フレリアが自分の頬を義父が叩いたからだと気付くには少しだけ時間があった。驚き信じられなかったからだ。
丸い目の中で茶色い瞳が揺れれば義父は、はっとしてフレリアを抱き締める
義父
「すまない、手を上げてしまって。…だが、フレリアが父親の僕に逆らうから…つい」
フレリアは逆らったら駄目なんだと…逆らったらまた叩かれる、そう考えたら身体から力を抜くしかなかった。
それを、受け入れてくれたんだと勘違いした義父は嬉しそうに表情を緩め歪んだ愛情を持ってフレリアの身体を貪っていった…。
義母
「なんて事したのよ、貴方!」
義父
「す、すまない…フレリアに誘惑されて、つい…」
フレリア
「……え…?」
義父の行為は簡単にバレてしまった。
義母はフレリアを庇う様に立っていたが、義父の言葉に思わず振り向く。フレリアは真実を話そうとするも…再び叩かれたら、そう考えると唇は開閉するだけで音が乗らない。
フレリアからしたら明らかな嘘であるのに、何も言わない彼女を見てそれが事実だと受け取った義母は目を吊り上げた
義母
「なんって子なの!」
フレリア
「あ…っ…!」
義母
「酷い子ね!」
結局…どちらでも手を上げられるのかとフレリアは絶望した。
そして、義母は恐ろしい行動へと出る
フレリア
「や…嫌…っ」
義母
「五月蝿い!」
フレリア
「あぁ゙…!」
ちょうど沸騰していた鍋のお湯をフレリアが向ける背中へと浴びせた。熱さよりもあまりの痛さにフレリアは床に蹲る。
その後、義母が出ていくと義父が慌てて病院へと駆け込んだが…彼女の背中には消えない火傷の痕が残った。
【リオン】
頭に血が上りやすいのをリオンは自分でも理解していた。
だから、彼等以外の家族が出来ても大丈夫なのか…内心では心配していた。
リオンを引き取ったのは農家の男だった。
義父
「リオン、そうじゃない。それは─」
リオン
「うっせぇな、分かってんだよ!」
義父
「分かってないから、俺がこうして……っ…!」
注意ばかりされるのが嫌で反抗し、彼が振り回した腕が男の頬に当たってしまった。だが、リオンの性格上やはり素直に謝れず家へと逃げ出してしまった