第23章 食い違いの悲劇
正面のソファに腰を落ち着けたヴィムとメル。
メルはイライラが治まらないのかそっぽを向いて唇を尖らせているが、ヴィムは脚を組んで笑みを浮かべたまま特別室メンバーを見据え口を開く
ヴィム
「まずは特別室の皆様に…まだオリヴィア姉さんが居た時の話をしましょうか」
オリヴィアの過去をリアムを除いた全員か知っていたが、それは知り合った時の事だけ。
彼等だけが知るオリヴィアの過去はレティシア達も、どこ出身か…しか知らなかった。その為、静かにヴィムの言葉に耳を傾ける
【とある過去での日常】
大きくは無いものの笑い声が絶えない暖かい孤児院があった。
一番年上で姉的存在であるオリヴィア
陽だまりの様な笑顔の優しいフレリア
冷静で宥め役のヴィム
喧嘩っ早いが家族思いのリオン
愛らしく甘え上手なメル
この5人は施設の中でも特に仲が良かった。
贅沢は出来ないが毎日が楽しくて施設にいる全員が全員を家族だと思っている。
心優しい夫のラディと妻のアーロは子宝に恵まれず悲しんだが、それなら親に捨てられてしまった子達を幸せにすれば良いと考え…2人はこの孤児院を作り、今では沢山の子達の親だ。
メル
「あ、リオン!それメルの!」
リオン
「へっ、食うのが遅せぇのが悪ぃんだよ!」
メル
「返してよぉ…っ」
緑の瞳には瞬く間に水の膜を張る。
それを見たリオンは慌てたものの素直に返す事も謝る事も出来ずに顔を背けた
メル
「リオン…っ」
フレリア
「ほら、メル。私のをあげるから…泣かないで」
丸い目を細めてメルの目から流れる涙を優しく拭いながら声をかけるフレリアは、自分の食べ物を彼女の皿へと移動させる。
それを見たメルは自分でも涙を拭いフレリアを見る
メル
「ありがとう…フレリアお姉ちゃん」
フレリア
「いいえ」
そのやり取りを聞いていたリオンは、ふんっと鼻を鳴らしながらも食べ終えた食器をキッチンに運ぶ。
そこにはリオンより先に食器を片付けに来ていたオリヴィアとヴィムがいた
リオン
「……オリヴィア姉さん」
オリヴィア
「ん?」
リオン
「その…」
何か言いづらそうに金の瞳をキョロキョロとさせるリオンを見てオリヴィアは急かす事はせず首を傾げて、言葉を待つ