第23章 食い違いの悲劇
オリヴィア
「私だって…お嬢の過去を聞いただけで…見た訳じゃないのにね」
ルシアン
「……皆そうだろ。その話をどう受け取るかで変わるんじゃないか?」
オリヴィア
「え…?」
ルシアン
「他人事だからと特に考えずに生きるのか。…ずっと忘れず胸の内に抱えて生きるのか。結局は受け取る側の問題…だろ」
オリヴィア
「それなら…特別室の皆は後者、ね」
ルシアン
「嗚呼。…他人が自分の過去を知っているのは落ち着かないが…信用してる奴が知っているのは、安心するだろ」
オリヴィアはルシアンの言葉に返事はしなかったものの、確かにそうだと思った。
弱みを握るとか…人の過去を材料としか考えていない誰かに知られるのは落ち着かないが…自分が信用した仲間が知っているのは、何だか安心した。
オリヴィア
「そろそろ…リアムにも話さないとね」
ルシアン
「オリヴィアのペースで良い。焦るな」
オリヴィア
「…ありがとう」
ふぅ…っと小さく息を吐き出したオリヴィアは灰皿に煙草を押し付けて火を消し、ルシアンの方へ向く。
オリヴィア
「さて、頭も冷えたし…お嬢達に謝りに戻ろうかしら」
ルシアン
「嗚呼。多分、謝罪なんか求めてないと思うけどな」
そんな事を話ながら2人は特別室へと脚を向けた─…
─ 特別室 ─
ノア
「あ!オリヴィアさん聞いてくださいよ、姫さんってば人使い荒いんすよ!?」
特別室へと戻った瞬間に聞こえてきたノアの縋る様な苦情は、まるでさっきの出来事が無かったかの様な響きでオリヴィアは固まる。
レティシア
「人聞き悪い事言うな。…それよりオリヴィア。んなとこに突っ立ってねぇで手伝え」
オリヴィア
「…っ…え、ええ…」
何が何だか分からないオリヴィアはひとまず頷いてレティシアに近付くと、テーブルの上には箱に詰められた綺麗なケーキが入っていた。
ソフィア
「コ、コーヒー…淹れました」
給湯室からコーヒーが淹ったカップのトレーを持つリアムとソフィアにもオリヴィアは戸惑う。
だが、ケーキを皿に乗せているレティシアへ視線を向け