第22章 貴方の面影をなぞって

ノア
｢囲むのは悪くないけど、こういう事もあるからね｣


しゃがんだまま彼等に声を掛けていたが、1人が起き上がり素早く動いてノアの背後に回ると羽交い締めにして立ち上がらせる


ノア
｢おお、今の動きは凄いな｣


呑気に感想を述べているノアを狙って拳を入れようとするのは、少し遅れて立ち上がった2人。だが、ノアは片方の口角を上げると


ノア
｢ごめんよ…っと！｣

訓練生
｢う、ぁっ…！｣


ぐっと力を込めて目の前の訓練生の身体を走る様にすると、そのまま羽交い締めしている訓練生の背後へと着地し、もう1人の迫って来ている訓練生へと背中を蹴ってぶつける


訓練生
｢わっ…！｣

サーラ
｢やめ！｣


息を吐き出したノアは倒れる3人に近付いてしゃがみ


ノア
｢大丈夫だった？｣

訓練生
｢あ、はい！最後の凄かったです！｣

ノア
｢ありがとう。けど、羽交い締めってのは良い案だった｣

訓練生
｢ありがとうございます！｣


負けはしたものの得るものがあった訓練生はノアにお礼を述べて仲間の元へと戻る。その姿はどこか晴れ晴れとしていた。


ソフィア
｢ノアさん、凄かったです…ね｣

オリヴィア
｢ふふ、そうね。流石はお嬢と保護者くんと現場で任務こなしてるだけあるわね｣

リアム
(保護者くんって確か…ルシアンさんの事だったか)


オリヴィアの特殊な呼び方に慣れたものの突然くると一瞬、誰の事だったか分からなくなるリアムは1人苦笑した。


リアム
(それにしてもルシアンさんとノアさんは流石だな)


軽い身のこなしや素早い判断は現場に出ているリアムも勉強になるものだった。普段、共に鍛錬していたり任務中はゆっくりと観察する事が出来ない為リアムにとっても貴重な時間だ。


オリヴィア
｢僕ちゃん｣

リアム
｢え？……あ、はい！｣

オリヴィア
｢お嬢が呼んでるわよ？｣

リアム
｢へ…？｣


オリヴィアに言われてレティシアへ視線を向けるとリアムに手招きしていた。
リアムは気を抜いていた。自分は呼ばれないだろうと…彼も特別室メンバーで現場に出ているにも関わらず、勝手にそう思っていたのだ。