第21章 対象者の壁となれ
小さく息を吐き出したランナはサンドイッチから視線を外し青々とした空を見上げる。
ランナの横顔はどこか寂しげにも見えた。
ランナ
「私はボディーガードになるのが夢でした」
レティシア
「なら、夢を叶えたんだな」
ランナ
「はい。でも、憧れと現実は違って…輝いたものではありませんでした。周りは男性ばかりで、女の私は浮いた存在でした。女だからと…馬鹿にされ。プライベートでスカートやヒールをはけば、だから女はと呆れられ」
眉を下げたランナは視線をまた手元に戻す
ランナ
「私はこれでは駄目だとスカートもヒールも…女らしい物は全て捨てました。鍛錬も男性よりもやりました。でも、どれだけ頑張っても力では勝てなくて…」
『やめ!…今日はここまでだ。解散!』
床に寝転んだままランナは起き上がれなかった。ジンジンと痛む背中だけが努力は実らないと言われているようで
『たく、どれだけ頑張っても勝てねぇんだから。女は大人しく男の慰めでもしてろよ』
先程ランナを背負い投げした男が彼女を見下ろしながら、そう吐き捨てた。ランナは悔しくて唇を噛み締め言い返そうとしたが…
キール
『おい、そんな言い方ねぇだろ。女性は道具じゃないんだ。…それに、頑張って一人前になろうとしてる奴を誰も馬鹿にして良い理由にはならねぇ』
「んだよ…くそっ」
男はキールの強い視線に苛ついたように言葉を吐き出してその場を去って行く。それを見送ったキールが、ふっと息を吐き出し表情を柔らかくしてランナへ手を差し伸べる
キール
『ほら、手貸してやる』
ランナ
『……ありがとう』
キール
『あんなの気にしなくて良い。ランナはすげぇよ。こんな男ばっかの所に飛び込んで来て、怯まずに立ち向かってんだからさ。…ま、けど…無理し過ぎんな』
隣に腰掛けたキールは柔らかく笑みながらランナの頭を撫でた。すると、今まで泣かないようにと堪えてきたが彼の優しさに涙腺は緩みポロポロと涙が溢れる。
拭っても拭っても溢れてくる涙に困っているとキールは優しく彼女を引き寄せて、自分の胸元に顔を埋めさせ
キール
『俺見てないから。溜まってた分、吐き出せよ』
ランナ
『ぅ……っ』
話を聞き終えたレティシアは優しい笑みを浮かべて膝の上に大人しく座るジルヴァの背を撫でた。