第21章 対象者の壁となれ
ランナ
「だけど貴女はヒールをはいて…私とは全く違う。私が諦めた女性らしいを貴女はやっていて…嫉妬しました」
露出が高いレティシアの格好を羨ましがっているのではなく、きっと自分の着たい物を着ている…それが嫉妬へと繋がったのだろう。レティシアは空へ視線を向け、柔らかく笑む
レティシア
「そりゃ…あんたと私は違うだろ。環境も役割も。…ここまでの道が楽だったかと言われればそうじゃない。それはあんたもだ。その道のりを知らず表面だけを見て勝手に想像すんのは容易だろう」
ランナ
「…貴女も苦労している、という事ですね。本当にすみません」
何も知らないで、知ろうともしないで…仕方が無いとはいえボディーガードという立場では褒められる行為ではなかったとランナは反省した。
きっと多くの人がそうだろう、上手くいっている人の表面だけを見て自分と比べ嫉妬し惨めになる…人として当然の感情のようにも思える。
ランナ
「貴女が大事にしているジルヴァくんをペットなんて言ってしまったのも、すみません」
レティシア
「あんたの反応が私は正しいと思うぞ。自分が命削って働いてる所に小型魔獣を連れて来たら、巫山戯てんのかって…なるだろ」
彼女の言葉にランナは申し訳なさそうに眉を下げながら、レティシアに撫でられて目を細めているジルヴァを見て言葉を口にする
ランナ
「ジルヴァくん…貴方の事も馬鹿にした言い方をしてしまいました。ごめんなさい」
声を掛けられたジルヴァは不思議そうに首を傾げてランナを見上げる。だが次には羽を揺らしてランナの膝へと飛び移った
レティシア
「ふふ…あんた小型魔獣、好きだろ」
ランナ
「へっ?いや、そんな事は…っ」
レティシア
「嘘だな。ジルが乗った時すげぇ嬉しそうな顔してたぞ」
ランナ
「うっ…」
片手で口元を覆い顔を隠そうとするも、ランナの膝の上で彼女を見上げているジルヴァの愛らしい姿を見てしまえば、手では隠せない程に表情が崩れる
ランナ
「可愛い…」
レティシア
「そうだろう、そうだろう」
ジルヴァが褒められればレティシアは自慢げに腕を組んで頷く。その姿はレティシアを褒めているのに自慢げにしているユリスにそっくりだった