第21章 対象者の壁となれ
レティシアの前には3人が迫ってきて、なんの躊躇いもなく彼女を傷付けようとそれぞれに長さの違う刃物を振り下ろす。
だが、レティシアが身軽に後退した事によりその鋭い刃が彼女に鮮血を流させる事は無かった。
一言も発さない目の前の黒を纏う3人をレティシアは、気味が悪そうに顔を歪める。
「………」
1人がレティシアの左側からナイフを振り下ろすと、それをレティシアは手首を払って回避する。が、右側からもう1人が拳を振り上げて迫ってこれば瞬時に体勢を整えたレティシアは思い切り回し蹴りをし…それがドミノの様に3人纏まって倒れる
レティシア
「フィピテオ」
「……っ…」
呪文を唱えた事により3人は立ち上がる前に縄で拘束され、レティシアが1人ずつ気絶させる。
レティシア
「ふぅ…」
彼女が交戦中ルシアンとリアムもまた戦っていた。
ルシアンよりも少し小柄な黒ずくめの存在は身軽に身体を動かして次々と拳を振るう
ルシアン
「…っ…」
一撃一撃の重さにルシアンは驚きつつも防ぐのに精一杯だ。
レティシアよりも早い回し蹴りを何とか防ぎ、脚を戻すその僅かな隙を狙ってルシアンは相手の腹部へと思い切り踵を埋め込ませる様に蹴りを入れる
ルシアン
「はっ…やっと良いのが入った」
顎まで伝ってきた汗を手の甲で拭って僅かに口角を上げながら言葉を吐き出す。重い蹴りを腹部へ受けた相手は顔は見えないものの腹部を押さえて上体を折っていた
リアム
「どわっ…!」
「………」
ルシアンの背後ではリアムも押され気味の状態だ。
相手はナイフを持っている。ナイフを持っている相手とは勿論これまでに戦った事がある。だが、目の前の黒ずくめの人物の動きはとても早く、運動神経が良いリアムでも避けるので精一杯だ
リアム
「く、そっ…!」
不意に視界に入ってきたレティシアは1人で3人を相手にしていた。それを見て呑気にも流石だな、なんて思ってしまうリアムだったが…まるで余所見をするなとでも言うようにナイフの刃がリアムを襲う
リアム
(俺も…役に立つ…!)
ちらっと自分の背後に居るリアムへ視線をやったルシアンは突然、彼へと声を上げる