第21章 対象者の壁となれ
そこには黒ずくめに武装している者が10人程いた。
キールとランナはゆっくりとドレイクを立たせる。武装している姿を視界に入れたドレイクは怯えたように小さく悲鳴を上げる。
ランナはドレイクを支えながらも先頭に立つレティシアの背中を見る。第一印象は彼女の中では良くない…その上、初対面の彼女を完璧に信用する事など出来なかった。
レティシア
「ジル」
ジルヴァ
「にゃ…!」
名を呼ばれただけで意図を理解したジルヴァは未だ支えられているドレイクの脚元へと駆けてくる。それを理解出来ないキール達は首を傾げる。
すると武装集団から目を逸らさずにレティシアが声を上げる
レティシア
「ドレイクさんはジルに任せろ。会合の時間が迫ってるんだ、全員でやった方すぐに済む」
ランナ
「馬鹿言わないでください!この子にドレイク様が守れるとでも言うのですか!」
キール
「ランナ。今はそんな事を言っている場合じゃない」
キールの言葉にランナは表情を歪める。
何故、知り合ったばかりの人の言葉を信じられるのか。小型魔獣がドレイクを守れるという保証も無いのに…何故。その思いがランナの心を占領する。
不意にズボンの裾を引っ掻かれる感覚があり、ランナは視線を下げて確認する…と、そこにはまるで"任せろ"とでも言っているようにランナを見上げるジルヴァがいた。
ランナはぎゅっと1度、目を閉じるとすぐに開きドレイクを見る
ランナ
「出来るだけ、下がっていてください」
ドレイク
「あ、嗚呼…」
すっかり怯えてしまっているドレイクはジルヴァに守られる事に文句を言わずに後ろへと下がる。
ルシアン
「何を隠しているか分からない。油断するなよ」
リアム
「はい!」
各々がいつでも反応できるように態勢を整える。
武装集団の1人が手を挙げると、それを合図に数人が飛び出してくる
レティシア
「行くぞ!」
レティシアの強い声にルシアンとリアムが走り出す。キールとランナは出来るだけドレイクから離れぬ様にする。それをドレイクはしゃがみ込んで自分よりも遥かに小さいジルヴァに縋る様にしている。