第18章 揺るがない物をくれた君
フェリックス
「婚約を断られはしたが…俺は彼女を諦めた訳では無い。みっともないがな」
ノア
「みっともなくなんか無いですよ」
車内から流れる景色を眺めながらフェリックスが述べると申し出を断られても尚、想いを寄せている様子の彼をノアは格好良いと思った。
ノア
「まだヒガンバナ基地の人達は来てないみたいですね」
フェリックス
「みたいだな。じきに来るだろ」
並べられたいくつもの長机の前にそれぞれ椅子を引いて腰を落ち着ける。
フェリックスとノアは1番前に置かれた椅子の位置が違うそこに腰を下ろし、部下達と向き合う様になる。
─ガチャ
レティシア
「すまない、遅くなった」
ノア
「………っ」
開いた扉から現した彼女の息を呑む様な美しさに、その場にいたアイリス基地の者達は釘付けになる。
ノアは今までに出会った女性達の事を勿論、美しいと思っていた。だが、レティシアの美しさは次元が違うと彼は思ったのだ。
入って来た際に聞いた口調は出会った女性では聞いた事が無く逞しさを感じるのに、綺麗な金の髪と睫毛に縁取られた丸い猫目の中で光る紫の瞳に白い肌は儚い…だが、彼女が纏う雰囲気は上品で…アンバランスの様に見えてバランスの取れた、名前しか知らなかったレティシアにノアは一瞬で目を奪われた。
ルシアン
「レティシア、早く座れ」
レティシア
「嗚呼」
彼女の後から入って来た男に促されるとレティシアはフェリックスの隣に腰を下ろし、その隣に黒髪の男が座る。
彼が自分と同じ役職なのか、と位置でノアが理解する。
ヒガンバナ基地の者達が揃い座り、レティシアの隣にシュヴァリエ家のフェリックスが居る事に分かりやすく驚くが、そんな事を気にせず彼が声を上げ顔合わせと捜査内容把握が始まった─…
捜査を始めて数日が経った時、今回の事に重要な情報が入ってきた。
レティシア
「成程…これだけの数がぶつかるから合同捜査というわけか」
ホワイトボードを見ながらレティシアは、少しばかり面倒臭そうに呟く。
フェリックス
「4チームに分けよう。それで囲むんだ」
彼の言葉にレティシアが、それが良いと頷く