第17章 醜い真実
ルシアン
「あいつの心が勝手に作り出した物だ。レティシアは自分が正しいと思う生き方をしていただけだ。…それを恐れ作り出したフィルターがお前の事を悪に仕立てただけで…何も間違っていない」
レティシア
(正しいと思った事…)
それはユリスが亡くなる前に言われた言葉と似ていた
"満里奈…お前は、お前が正しいと思った事を…これからもやっていけ。…それが、誰かを助ける事に…繋がる"
だが、正しい事をしてきて…例えそれが他人の作ったフィルターのせいだったとして…傷付いた人がいるのに助ける事に繋がっているのだろうか、レティシアにその不安が襲い掛かる。
ルシアン
「レティシアは良く頑張ってる。今も昔も…ユリスだってそう言う」
ルシアンの優しく甘やかす様な視線と重なるとレティシアは、どこか子供の頃に戻った気分になり再びルシアンの胸板に顔を埋める。
すると、それに気が付いたルシアンはレティシアの金の髪を梳くように撫でる
それだけで、レティシアの胸の内に巣食い始めていた不安という闇が少しずつ晴れていくようだった。
幼い頃からの自分を知っていて、その頃からずっと一緒に居てくれる人が居るという事実がレティシアの精神を安定させる
レティシア
「ルシアンが…私の傍に居てくれて良かった」
普段の力強い声とは違い触れたら溶ける雪のように脆く弱い声がルシアンの鼓膜を揺らす。
それを聞いたルシアンは髪を撫でていた手を肩に移動させ、もう片腕を背中に回すとしっかり抱き締めてやる
ルシアン
「俺はちゃんと傍に居る。ユリスが居れなかった分、俺がお前の傍に居る」
レティシア
「嗚呼。…ありがとう」
ルシアン
「エドゥアルの事が片付く時だって傍に居る」
レティシア
「頼もしいな。…あれから1度も姿を見てないし、情報もない」
ルシアン
「…俺等だけじゃない。皆居る」
レティシア
「そうだな、絶対に見付ける。…けどまず明日…やる事がある」
まだまだ探らなくてはならない事は沢山ある。
エドゥアルの所在や呪いの理由…ユリスの様に優秀だった彼を見付けるのは容易ではない。
それに、それだけを調べられるほど日々は平和ではなく次から次へと任務がやってくる
だから今は、ジルヴァが無事だった事に安心するのだった