第16章 正体
レティシア
「だが、幸いまだ試された人間は少ない。被害者が増える前に、この馬鹿みてぇな実験を止めさせるんだ」
強くレティシアが告げると全員が大きく頷く。
それを見ながらもレティシアは、どこか違和感の様なものを感じていた。
ルシアン
「何か気になる事でもあるのか」
彼女の様子に気が付いたルシアンがレティシアに声を掛けると、朧気なそれを吐き出す
レティシア
「何故こんな事をするのかと思ってな」
ルシアン
「人獣を増やした所でメリットがあるとも思えんしな」
レティシア
「嗚呼。…悪い、少し違和感があっただけだ。気にしないでくれ」
苦笑しながら見上げるレティシアの頭を、ルシアンは優しく撫でてやる
ルシアン
「今考えなくても、シモン指揮官長に直接聞きゃ良い」
レティシア
「…そうだな」
降ってきた言葉にレティシアは、ふっと笑みを浮かべて頷いた。
これからの事について作戦を練ろうとレティシアが全員に向き直った時…
─ピピッ
指揮官のパソコンに任務が入り、レティシアは内容を確認すると目を丸くしつつも慌ててソフィアに詳細を送る。
確認したソフィアもレティシアと同じ様に目を丸くする
ソフィア
「緊急任務、です。…以前戦った人獣が現れたようです」
リアム
「……っ」
ノア
「ナイスタイミングなのか、そうじゃねぇのか」
レティシア
「とにかく行くぞ!」
ルシアン
「嗚呼」
ルシアン
「レティシアとノアは先に行け!」
レティシア
「分かった!」
魔法が使える2人が先に到着した方が良いと判断したルシアンの声が駐車場まで降りてくると響いた。
その意図を理解したレティシアとノアはそれぞれにバイクに跨り、ジルヴァはレティシアの前に大人しく座った。
そして、彼女達の後ろにルシアンとリアムが乗った車がついて行く