第15章 人か獣か
押さえる肩から血を流して横たわっている男性の傍にレティシアが両膝をついて声を掛ける
レティシア
「肩の傷、少し見せてください」
男性
「ぅ…あ、嗚呼…」
レティシア
「これは…」
血に濡れた手が退かされ、レティシアが傷の様子を確認する。
その傷は何かに貫かれた様なもので…
レティシア
(これは…武器でやられたものじゃないな。…魔獣の爪によるものにも見えるが、少し違う気もする…)
眉間に力を込め目を細めて考えるが違和感しか無く答えは出ない。
レティシアはそれを確認すると咥内で呪文を小さく呟き男性の肩に空いた穴を塞ぐ。
その様子を見ていた男性の表情は苦痛から解放され、感謝の視線をレティシアへ向ける
男性
「ありがとう…っ…ありがとう、ございます…っ」
レティシア
「いえ。…ところで、この傷はどんな人物にやられたか分かりませんか」
男性
「動きが早くて…良くは分かりませんでしたが、人間…いや、でもあれは…」
記憶が曖昧なのか、それともその存在が異様だったのかは分からないが男性はその時を思い出しながら話す。
男性
「獣の様にも…見えて…」
レティシア
「……っ…そうですか」
人の様で獣の様…それは最近ずっと気になっている者と一致する。
まさか…そんな事を思うレティシアだったが、まだ重傷者は居ると頭を切り替え男性から離れ、また別の人の元へ向かう
かすり傷で済んだ人達はルシアンとリアムが手当をして、救急隊が来るまでレティシアとノアは治すか応急処置を魔法で施していく。
程なくして救急隊が到着し交代する
レティシア
「どうだ、話は聞けたか?」
ルシアン
「聞けたが…どうもはっきりしないんだ」
レティシア
「はっきり?」
リアム
「誰に聞いても人の様にも獣の様にも見えるっつーんだ」
それは、レティシアが聞いたのもの同じだった。
他の人も言っていたとなると、関連性が高い事が分かり全員が顔を見合せたその時…
「いやあぁっ!」
女性の悲鳴が届き4人は慌ててそっちへ走り出す