第13章 憧れに似ているあいつ
見た目に反して話しやすそうな空気を醸し出すマティスに、リアムは軽く自身の事を名乗ってから持っていた写真を彼の前に出す
リアム
「この写真を撮った当時の事、覚えてますか?」
リアムの問い掛けにマティスは写真を摘み確認する。
穏やかだった男の眉間に徐々にシワが刻まれていき、摘んでいた写真を軽く投げるように机へ戻す
マティス
「あんた守護官か。…この写真の事を聞いて何が知りてぇんだ」
机に頬杖をついてリアムを眺めるマティスは、怒っているというより…どこか探る様な警戒する様な視線を向けている。
リアムはジャンにもしてしまった失敗をまたしてしまったと慌て、背筋を伸ばす
リアム
「な、何か疑いがあるから伺ったんじゃなくて…その、マティスさんの事を捕まえた奴の事を知りたくて」
焦りから僅かに早口になるリアムへ、じっとマティスは鋭い眼光を向ける
マティス
「俺の事を捕まえた奴ね。…何で知りてぇんだ」
リアム
「自分の中にある疑問を無くしたくて…自分勝手な理由で嫌な事を思い出させようとしているのは分かってるんです。けど、どうしても知りたくて」
リアムは下がりかけていた視線を上げてマティスに負けないように見詰め返す。
知りたい、という強い意志が紺の瞳から伝わったのかマティスは小さく笑って背もたれに身を預け腕を組む
マティス
「俺の犯罪履歴は真っ黒でな。どうしようもねぇくそ野郎だった。…唯一やってなかったのが殺しだ」
リアム
「………」
写真を貰っただけのリアムはマティスの犯罪歴がそんなにもあるなんて知らなくて内心、驚く。
目の前にいる男は確かに怖いが、雰囲気が優しいため犯罪歴が真っ黒という言葉は、何となく信じがたかった
マティス
「だが、そのやってなかった殺人にまで手を染めちまったんだ。借金の取り立てをしてた時…その男がナイフを取り出してな。必死で止めた」
視線を僅かに下げたマティスはその時の事を思い出しているような表情をしていた